駒澤大学・大八木弘明総監督が歩む「箱根駅伝から世界へ」の新たな道 自ら立ち上げた「Ggoat」で世界レベルの選手育成に励む (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【指導者として学ぶ世界トップの陸上競技】

――Sチームに入る基準はあるのでしょうか?

大八木 1万mなら28分そこそこで走れる力があれば、Sチームに入れてやらせてみたいとは考えているんですけどね......。でも、5000mを13分30秒台で走れなかったら、Sに来てもたぶん練習はできないだろうなと思っています。タイムだけでなく、常日頃の練習も見ていますが。

――今年4月からは"Sチーム""大八木塾"と呼ばれていた選抜チームが"Ggoat"(*)というプロジェクトとして新たにスタートしました。

*アメリカのスポーツ界で使用される「goat(=greatest of all time/史上最高)」と自身の名前「goat(やぎ)」にかけて命名。ちなみにプロジェクトの和文キャッチは「史上最強」とうたっている

大八木 もともと定年をひとつの区切りにしようと思っていて、5年ぐらい前から計画をしていたことなんです。田澤が入学した時ですね。その後に芽吹や圭汰も入ってきて、思い描いていた計画は順調に来ています。

――奥様の京子さんも、再び選手に食事を提供するようになりました。

大八木 学生の篠原と圭汰は道環寮(陸上競技部の寮)で食べていますが、田澤と芽吹は私の家で食べています。海外で合宿を行なう時にも、女房が一緒に付いてきてくれて食事を作ってくれています。

 女房からは「定年になったら旅行に行くとばかり思っていた」って言われましたけど。結局、旅行が遠征になっちゃいましたね(笑)。

――Sチームは"世界を目指すチーム"とおっしゃっていました。海外での合宿や国際大会などで世界を見る機会が以前よりも多くなったのではないでしょうか。

大八木 海外にも結構行かせてもらっていますし、選手を海外のクラブチームに送り込んだりもしているので、私自身、学ぶことが多いです。

 日本の実業団や大学と海外のクラブチームを見て、やっぱり違うところはあります。海外のチームの良いところは見習っていきたいですが、日本は日本で良いところがあると思っています。5000m12分台、1万m26分台の選手を抱えている向こうのクラブチームのトレーニング内容も参考にしますが、やっぱり日本人と欧米の選手、アフリカの選手とでは体質や体格も違いますから。そういった点を見極めながら、日本人に合った育成の仕方をしたいなと考えています。それを先駆けて取り組んでおり、今も試行錯誤しています。

 1万mでは太田(智樹、トヨタ自動車)が27分10秒台まで持ってきましたし、田澤も27分20秒台はコンスタントに出せるようになった。佐藤も5000mで、室内ではありますが、13分一ケタ台まできました。日本もようやくトラックで26分台、12分台が見えてきました。

 日本のほかのチームにも海外のクラブチームに勉強をしに行っている選手、コーチがいます。それらを日本に持ち帰って、みんなで鎬(しのぎ)を削って、レベルアップしている最中なんだと思います。彼らは、誰もがいち早く12分台、26分台を出したいと思っていると思います。

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