北京五輪リレー銀メダル獲得直後、4人が感じた日本陸上「挑戦の歴史」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

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PLAYBACK! オリンピック名勝負―――蘇る記憶 第27回

スポーツファンの興奮と感動を生み出す祭典・オリンピック。この連載では、テレビにかじりついて応援した、あの時の名シーン、名勝負を振り返ります。

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 2008年北京五輪男子4×100mリレーで、日本は五輪陸上競技トラック種目で80年ぶりとなるメダルを獲得した。1928年アムステルダム五輪女子800mで、人見絹江が獲得した銀メダル以来。男子では初となる快挙だった。この銅メダル(のちに優勝したジャマイカの失格により銀メダルに繰り上がった)は、日本男子短距離界が20年を超えて挑戦をつづけてきた成果でもあった。

北京五輪の4×100mリレーでメダルを獲得した日本チーム。写真左から、末續慎吾、髙平慎士、朝原宣治、塚原直貴北京五輪の4×100mリレーでメダルを獲得した日本チーム。写真左から、末續慎吾、髙平慎士、朝原宣治、塚原直貴 8月22日の決勝は、現地時間22時すぎに行なわれた。選手たちはスタートまでの長い時間、緊張を強いられた。朝原宣治は「メダルのことを考えないようにしても、心の片隅には絶対にあるし、失敗できないという思いもあるから、それが辛くて吐きそうになるくらい緊張していました」と、この時の様子を振り返った。

 朝原、塚原直貴、末續慎吾、髙平慎士の4人は、「メダル」という言葉を口に出さないようにしていた。それを言ってしまえば逃げて行ってしまいそうな気がしたからだ。「そうしたら、為末大さんが、『今日は歴史的な瞬間を迎える日だな』なんて言い出して......」と髙平が苦笑する。

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