今井正人が粘りの走り。元祖・山の神には「休む勇気」が必要だった (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 一方、優勝したビルハヌ・レゲセ(エチオピア)は、ペースメーカーが外れた30km過ぎから並走していたビタン・カロキ(横浜DeNA)を徐々に突き放し、ほとんどの選手が16分台に落ち込んだ35~40kmも15分04秒で走り、ラスト2.195kmも唯一の6分台でカバー。自己記録より33秒遅いだけの2時間04分48秒で世界トップレベルの強さを見せた。

 日本陸上競技連盟の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、この結果をこう分析する。

「優勝したレゲセ選手は寒い中でもあの記録だから2時間2分台の選手だと言っていい。日本はまだ(トップクラスの選手で)2時間6分前後なので、その力の差が雨の中で出てしまった。日本選手の力はまだまだだと認めなければいけない」

 結局、日本勢は前半から2時間6分台を狙う集団にいた選手たちが後半になって順位を上げ、5位(2時間10分21秒)になった初マラソンの堀尾謙介(中央大)と6位(2時間10分30秒)の今井正人(トヨタ自動車九州)、7位(2時間10分35秒)の藤川拓也(中国電力)が日本人3位以内で条件のタイムをクリアし、MGC出場権を獲得した。このほか、2レース平均タイムのワイルドカードで8位(2時間11分05秒)の神野大地(セルソース)がMGC出場権を獲得する結果になった。

 その中で、安堵の表情を見せていたのが今井だ。

「25km手前の橋の下りで、四頭筋や座骨系の結節あたりがちょっと動かなくなって『いけないな』という感覚が出てきてしまった」と、4人になっていた日本人集団から遅れ始めた。だが「気持ちはまだあったので、まだまだ終わりじゃないと思って走った」と粘りを見せた。

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