持ち前の修正力でガラッと走りを変更。山縣亮太が銅メダルを獲得する

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 奥井隆史●写真 photo by Okui Takashi

 アジア大会陸上競技男子100m決勝は、10秒00以内でなければ表彰台に上がれないという、かつてないハイレベルな戦いになった。

 山縣亮太(セイコー)は決勝レースをこう振り返る。

アジア大会で、価値ある銅メダルを獲得した山縣亮太アジア大会で、価値ある銅メダルを獲得した山縣亮太「決勝で蘇選手は、スタートからもっと(前に)出るということを意識していたと思うのですが、その分後半は伸びきらなかったのかなと......。中盤以降は思ったより差が広がらずに(試合を)運べたというところは自信になりました」

 山縣もスムーズなスタートをしたが、蘇炳添(中国)の動きもよく、山縣より少し前に出る展開になった。そのまま、差があまり広がらない状態で中盤までいったが、ラスト30mくらいから蘇がスーッと抜け出してトップでゴールした。

 追い風0.8mの条件のなかで、優勝タイム9秒92で大会記録を0秒01更新。今年は1月の室内シーズンから安定した走りを見せ、3月の世界室内選手権60mで2位になっている。また、屋外シーズンもアジアやアメリカ、ヨーロッパを転戦して6月にはアジア記録の9秒91を2回出した。

 そんな地力のある蘇に、大きく離されることなくゴールした山縣。優勝タイムが9秒92と掲示された瞬間には、山縣も9秒台に突入したのではという期待が高まった。しかし、結果は10秒00。追い込んできたトシン・オグノデ(カタール)に僅かにかわされて3位という結果だった。トシンは、フェミ・オグノデ(自己ベスト9秒91)の弟だ。

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