神野大地が泣き崩れるに至った、東京マラソンのレース状況を密着ルポ (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 神野のこのレースでの目標は、2時間8分台の記録とMGC出場権獲得だった。

 昨年12月の福岡国際マラソンでは、初レースという緊張もあって鍛えた筋肉を使えず、マメもできて自分の走りができなかった。タイムも2時間10分を切れずに2時間12分50秒に終わった。

 同レースで2時間7分19秒を出した大迫傑との力の差を感じたが、その後は東京マラソンに向けて調整してきた。

「福岡ではハムストリングスと臀筋(でんきん)を使う走りができず、ほとんど鍛えていなかった大腿四頭筋を使ってしまい消耗してしまった。僕はスピードがあるタイプではないので、そこに不安を感じていたんですが、ほとんどスピード系の練習はしませんでした。マラソンなので距離を踏む練習をすれば走れるかなって思って、とりあえず長い距離を走る練習をしていたんです。でも、あんな結果に終わってしまって......。走ってみてわかったんですが、僕には1km3分ペースでいく余裕もなかったんです」

 福岡の後、東京マラソンに向けて神野が着手したのは、「3分の余裕度」を作ることだった。

「福岡では1km3分ペースで走ることを意識してやってきたんですが、余裕でいけるぐらいの感覚がないとマラソンで1km3分ペースを守って走るのは難しいと思ったんです。それで、『3分の余裕度』を作る練習を始めました」

 1月には、井上大仁、木滑良、鈴木健吾とともに日本陸連のニュージーランド合宿に参加。スピード練習ではひとりでは追えないタイムで井上と鈴木に喰らいついて走った。距離走もアップダウンが激しい厳しいコースで40kmを2本、50kmを1本走った。

「その3週間の合宿では質の高い練習ができて、3分の余裕度にかなりの手応えを感じました」

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