車いすバスケ男子日本代表が強豪国に勝利。東京パラで呪縛を解けるか (2ページ目)

  • 斎藤寿子●取材・文・写真 text&photo by Saito Hisako

 この日、チーム最多の18得点をマークした藤本怜央は、前日にこんなことを語っていた。

「3カ月前のMWCC(国際強化試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP」)では、15点差以上つけなければ決勝に進出することができないなかで、6点差での勝利。この時のイランは、決勝に向けた調整だと言っていたみたいなので、今回は『日本には勝てる』という彼らの思いをしっかりと打ち消す試合をしたいと思います」

 その言葉どおり、日本は攻守にわたってイランを圧倒し、完勝。きっちりと3カ月前の雪辱を果たしてみせた。

 そして、2つ目の高い山が、予選リーグ最終戦で訪れた。アジアオセアニア地区で王者に君臨し続けているオーストラリア。過去にはパラリンピックで二度、金メダルを獲得したこともある強豪だ。

 日本は、AOCではオーストラリアに一度も勝ったことがない。勝てば車いすバスケ界の歴史に新たな1ページが刻み込まれる。そんな大一番は、及川HCが予想していたとおり、トランジションバスケ同士の"ガチンコ勝負"となった。

 第1クォーター、16-17。第2クォーター、35-36。前半を終えて、オーストラリアのリードはわずか1点。試合の行方は、まったくわからなかった。

 第3クォーターで47-53と一度は引き離されかけた日本だったが、第4クォーターでじりじりと点差を詰め、残り1分、藤本のゴール下でのタフショットが決まり、ついに同点に追いついた。そして、古澤拓也、豊島英(あきら)、藤本の華麗な連係プレーによる得点で、63-61と逆転。さらに藤本がフリースローを1本決めて、64-61。残り時間は4秒。オーストラリアは最後のワンプレーにかけ、3Pシュートを狙ったが、そのボールはリングに弾かれた。その瞬間、日本の勝利を告げる試合終了のブザーが鳴り響いた。

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