杉浦佳子はパラサイクリングのメダル候補「みんなの笑顔が力になる」 (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 浅原満明●写真 photo by Asahara Mitsuaki

 ここでスイッチが入り、目標を定めた杉浦。所属先や競技団体などのサポートを受け、コーチの指導でインターバルトレーニングなどの苦しい強化メニューをこなして急成長。3カ月後に挑んだ世界選手権では、5月の初レースで敗れた2選手に競り勝ち、初優勝を遂げた。

苦しい練習も乗り越えて、東京パラを見据えている苦しい練習も乗り越えて、東京パラを見据えている 以来、好成績を重ね、翌2018年には世界選手権連覇を含む、国際自転車競技連合(UCI)主催大会で8戦7勝。めざましい活躍が評価され、同年秋にはUCIが選ぶパラサイクリングの最優秀選手賞も受賞した。欧米勢の強い自転車競技において、アジア人としては初の栄誉だった。

「いろいろな方のお陰でいただけた賞。感謝しかありません。応援してくれる人の喜ぶ顔が見たい。それが頑張る原動力なんです」

 こうして杉浦は、東京パラリンピックの金メダル候補に躍り出た。周囲の期待も注目もどんどん高まるが、プレッシャーにはならないと笑う。自転車競技はただの趣味だったのに、今は大勢の人に応援され、メダルを獲れば喜ばれる。「期待はごちそう。それを食べてパワーにしようと思います」

 身長156㎝と小柄な杉浦だが、身体的な強みのひとつは高い心肺能力だ。起伏の激しいコースでもペダルを踏み続けられ、スピードは落ちない。また、筋力トレーニングにも地道に取り組み、トレーニング強度の基準となるFTP値(※1)やパワーウェイトレシオ(※2)は徐々に上がり、最近は「ひとつ上のギアが踏めるようになった」という。見た目の体格ではかなわない欧米選手とも十分戦えるパワーが確実についていることの証だろう。
※1 Functional Threshold Power/1時間持続できる最大ワット(パワー)数
※2 体重1kgあたりで出力できるワット(パワー)数

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