「普通の人」が金メダリストに。ゴールボールが変えた、浦田理恵の毎日 (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 竹藤光市●写真 photo by Takefuji Koichi

 周囲の音に耳を澄ますクセがついて、近づいてくる人や乗り物などに敏感になり、そのうち、音源と自分の距離感もつかめるようになった。例えば、向かってくる人の足音を聞き、ぶつからずにすれ違うことができたり、落とした物を上手に拾えるようにもなった。

片手で重いボールを力強く投げることもできるようになった片手で重いボールを力強く投げることもできるようになった さらに、一度は閉じてしまった世界が、再び開けたようにも感じたという。見えなくなってからは余裕がなく、どうしても自分中心の暮らしだったが、チーム競技のゴールボールでは、「仲間は今、どんな状態か」を感じてプレーしなければならない。常に仲間に興味を持ち、気を配ることが社会とのつながりも広げてくれたのだ。

「ゴールボールに出会えたことは本当に大きかった。競技としてもやりがいがあるし、日常生活にもすごく生きています」

 ロンドン大会で金メダルを獲得して以降、ゴールボールの知名度も一気に上がり、講演会に呼ばれることも増えた。そこで浦田は、自身の半生を真摯に伝えている。視力を失って諦めたこと、ゴールボールと出会ってできるようになったこと、夢を持つことで、前向きになれたこと......。

「私は才能などない普通の人。普通の人が勝つためには努力しかありません。諦めなければ、絶対にかないます」

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