ボッチャ国内初の国際大会で観客を沸かせた「ミリ単位の超絶技巧」 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 特に大きな注目を集めたのが、BC1/BC2の日本対タイのチーム戦だ。昨年のリオパラリンピックで日本がこのチーム戦の銀メダルを獲得したことで、一気に競技の知名度が高まった。この時、日本が決勝で敗れた相手が、王者・タイ。今回はそのリベンジを地元で果たす、絶好の機会となった。

 初日はタイのパワーと正確な技術に押され、大差で敗れた日本だったが、最終日の2戦目で意地を見せた。まず日本は杉村英孝(静岡ボッチャ協会)、廣瀬隆喜(西尾レントオール)、藤井友里子(富山ボッチャクラブ)が出場。2点ビハインドで迎えた第3エンド、日本の最後の一投を託された杉村が、まるでジャックに吸い寄せられるような正確なスローを見せる。ここでタイに自分のボールを日本のボールに当てるミスが出て、日本が2点を奪取。同点に追いついた。

 後半に入り、日本は藤井に代わり、19歳の中村拓海(伊丹ボッチャクラブ)を投入。中村は藤井同様、コントロールが難しいとされる上投げだが、味方のボールを押し込むだけでなく、投げたボールもジャックにピタリと寄せる技術力を発揮。さらに廣瀬と杉村が相手のコースを防ぎ、ジャックの裏をとるなど、多彩な攻撃をしかけていく。1点を追いかける最終の第6エンドは、審判がライトを使ってジャックと両チームの距離を測る、まさにミリ単位の攻防に。これを日本が取り、タイブレークへと持ち込んだ。

 タイブレークは、コイントスで先攻・後攻を決め、コート中央のクロスにジャックボールを置いた状態から始める。会場の観客が固唾を飲んで見守る、独特の緊張感が漂う場面でも、日本チームは落ち着いていた。杉村がジャックに寄せ、中村がスペースを作ったところに、廣瀬が絶妙なショットを押し込んで相手にプレッシャーをかける。すると、タイのボールはラインを割ってアウトに。このミスが影響し、日本が勝利。ついに一時間半を超える大接戦に終止符が打たれ、観客からは大きな拍手が送られた。

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