公務員試験合格→和歌山県庁内定。それでも御嶽海が角界を選んだわけ (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 だから、僕はアマ相撲の名門・和歌山県庁に就職して、仕事をしながらアマチュアで相撲を続けていく道を選ぶことにしたんです。公務員試験に合格し、内定もいただきました。

自身の角界入りの経緯について語る御嶽海自身の角界入りの経緯について語る御嶽海 一方で、2つのビッグタイトルを手にしたことで、僕の気持ちが揺れていたことも事実です。2年前にアマ日本一を賭けて戦った遠藤関は、幕下付け出しからすぐに関取に昇進し、アッという間に人気力士になっていました。

 そんな時です。出羽海親方(元前頭・小城ノ花)から、「出羽海部屋の再興のために、力を貸してもらえないだろうか?」というお話をいただいたのは......。

 それまで、大相撲の世界にそれほど興味がなかった僕は、出羽海部屋がどういう部屋なのか、ということすら、わかっていませんでした。

 あとから知ったのは、以前は幕内力士の半分を出羽海部屋の力士が占めるほどの勢いがあり、理事長なども出ている名門だということ。しかしその当時は、関取がいなくて、力士の人数も減っていたということ。それでも、いずれ「名門復活」を狙っているということ......。

 遠藤関の活躍ぶりも刺激になっていたし、徐々にですが、僕の気持ちは「このチャンスに賭けてみよう」というほうに傾いていきました。

 そして2015年2月、僕は出羽海部屋に入門しました。

 和歌山県庁のほうは辞退したため、いろいろな人に迷惑をかけてしまいました。だから、プロに行く限り、絶対に結果を出さなければ......。入門が決まってうれしいとか、そういう気持ちよりも、プレッシャーのほうが大きかったように思います。

 四股名は、上松町から臨める『御嶽山』に、出羽海部屋の『海』をいいただき、御嶽海。地元が一発でわかる本当にいい四股名だと、僕自身とても気に入っています。

 迎えた3月の春場所(3月場所)。僕の戦いが始まりました。

(つづく)

御嶽海久司(みたけうみ・ひさし)
本名:大道久司(おおみち・ひさし)。1992年12月25日生まれ。長野県出身。180cm、177kg。出羽海部屋所属。得意技は突き・押し。学生相撲で活躍したあと、角界入り。思い切りのいい押し相撲と、周囲を魅了する明るいキャラクターで、子どもから大人まで幅広いファンから支持を得ている。幕内優勝2回。三賞受賞8回。

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