ロシア女子は年齢制限引き上げでどうなるのか。フィギュアスケート国際審判員に聞く (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

ロシア勢もルール変更に対応してくる

 ただし、フィギュア王国のロシアが手をこまねいているわけはないので、女子の選手育成においてたぶん対応してくるだろうと思います。具体的にはわからないですけど、15歳で完成するのではなくて、17歳で完成する選手を作るという方針に当然変えてくるはずです。選手育成はいきなり成果が出るわけではないので。そこの対応にどのくらいかかるのか。1~2年で対応できるのか。

 ロシアには、伝統的なフィギュアスケートを教える指導者、「ルールに合って高得点ならそれでいい」というのではない指導者たちも当然いて、サンクトペテルブルクを拠点にして活動しています。ですから、ロシア女子が日本女子のライバルであることはこれからも変わりなく、今回の年齢制限のルール変更を踏まえて対応してくれば、その後は怖い存在になるだろうと思います。エテリ・トゥトベリーゼ先生の門下ではないところからもいい選手が育ってくるでしょう。

 これまでエテリ組は、ジャンプを跳べるようにすることだけではなく、5つのコンポーネンツのそれぞれの項目について「こういうふうに評価してるんだよね」というのに合わせてプログラムの作り方をしてきました。スピンのレベルをとるためには「こういうことが要るよね」とか、そういうことのひとつひとつに全部対応して、つき詰めてきたわけです。

 プログラムの作りもすごくあざといというのかな。「誰が見ても『白鳥の湖』をよく創り込まれた振り付けにしているから点数を出すしかないよね」という具合に。ソチ五輪で『シンドラーのリスト』の赤いコートを着たユリヤ・リプニツカヤ選手の演技にしても、低く評価するところがなくて、なおかつ、動きが音に合っていて、映画のなかで出てきた女の子を演じるという意味では、そういう雰囲気をプログラムの冒頭と終盤のところに創り込んでいるわけです。

 エテリ組のプログラムの特徴なのですが、最初と最後はしっかりとテーマに合わせて作ってあって、プログラムの真ん中(核)はテーマから多少離れても、そこは他の項目で高得点を得られる振付構成になっている。だからスケートが多少ヘタだろうが何だろうが、「5つの項目のどこを取っても高く評価するしかない」プログラムです。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る