真摯に、丁寧に。宮原知子は
「自分の世界をつくり出したい」
乱れた呼吸を整えながら、丁寧に質問に答えていた。大勢の記者に囲まれ、煌々とした照明を浴びたせいか、頬に一筋の汗が落ちる。
全日本選手権、ショートプログラムで2位の宮原知子「大きなミスはなかったので、ほっとしています」
宮原知子(21歳)は、安堵を声に含ませて吐き出した。
「グランプリシリーズの2戦と比べて、落ち着いて演技できたと思います。ショート(プログラム)の時は、なんでか、わからないんですけど、無駄に緊張してしまった自分がいて。(今日は)それを絶対に繰り返したくないなと思って。まずは落ち着いて6分間練習から、と。一つ一つ少し丁寧にしすぎて、もう少し思い切ってもよかったと思っていいますが、伸び伸びと滑れていると思います」
12月19日に開幕した全日本フィギュアスケート選手権、女子ショートプログラム(SP)。宮原は70.11点で、紀平梨花に次ぐ2位につけた。ジャンプは2つ回転不足を取られたものの、演技構成点はトップだった。
「自分の世界をつくり出したい」
そう話していた宮原が、銀盤につくり出した世界とは――。
国立代々木競技場第一体育館。SP前日の公式練習で、宮原は氷の具合をじっくり確かめていた。常設ではないリンクでは、"氷のしまり"が悪いことがある。しかし、感触は悪くはなかった。ジャンプも上がる感覚を手にすることができた。
曲かけでは、ショートの「Tabla&Percussion Solo」を選び、細やかに演じていた。時間がすぎて曲が途切れても、最後まで滑り切った。高い集中力で、完成度を高めていた。
「今シーズンは、まだ納得できる演技ができていません」
宮原はそう心中を明かしていた。
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