羽生結弦がプログラム構成を変更。「自分の気持ちを解放してやりたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 曲かけは、ショートプログラム(SP)の『秋によせて』だった。静かな曲の流れの中で4回転サルコウとトリプルアクセルを軽やかに決める。だが、オータムクラシックの時より少し後ろにずらして後半にした4回転トーループ+3回転トーループは最初のジャンプが2回転になって着氷を乱し、やや強引に3回転トーループを付けた。

 その後のフライングキャメルスピンはスキップして、チェンジフットシットスピンから演技を再開すると、空間を大きく使ったステップを情熱的に滑り、最後はチェンジフットコンビネーションスピンで締めた。

「ショートの4回転トーループ+3回転トーループを後半にしたのは、オータムクラシックでも言っていたように勝たなきゃいけないからです。ただ、自分がこの曲で表現したいことは絶対に譲れないなと思って......。大変ではあったけど、4回転トーループからの連続ジャンプを少しずらして後半に入れ、そのうえでジャンプ以外の要素も後半にすべて入れるという構成にしました」

 ジョニー・ウイアの演技を見て印象が強かったもののひとつに、彼のジャンプの「流れるようなランディングの美しさがあった」と羽生は以前話していた。だからこそ、このプログラムでは曲調が緩やかな前半のうちに力みのない、柔らかな流れのあるジャンプを決めて、後半の曲が盛り上がるところをスピンとステップで自分の感情を表現したいという意図がある。

 羽生は「やっぱりジャンプが終わると自分も気持ちをより入れることができますし、ある意味解放されるところはある。そうやって自分の気持ちを解放して、スピンやステップをやりたいという意識がすごくあります」と説明する。この日の練習でも意識していたのが、力みのない軽やかで美しいジャンプだったのだろう。

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