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東京女子プロレスの原宿ぽむが語る、自分のなかにある陰と陽 「最後まで茶化したいけど、スイッチが入ってしまう」 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

 チャンピオンのマッチャは、さくらえみや米山香織にプロレスを学び、型破りなセンスを持つ選手。ぽむも十分に"異端"だが、マッチャも負けてはいない。

 竹刀、ぬいぐるみ、チェーン、パイプ椅子......異色な凶器が乱れ飛ぶハードコアマッチが展開される。そして、マッチャの必殺技、サイトー・スープレックス(バックドロップ)が炸裂。ぽむはこれを見事に受けきり、カウント2で返すと――ぽむ・ど・じゃすてぃすを2連発。マットに沈んだのは、王者・マッチャだった。

「ぽむの自由なスタイルで勝てて、本当にうれしかった。今までやってきたことは間違ってなかったと思えました。それまでは、勝つよりも『楽しくやりたい』って気持ちのほうが強かったけど、最近は勝ちたい。ベルト獲得のチャンスがきてから、だいぶ意識が変わりました」

【"プロレスラー原宿ぽむ"と、本当の自分】

 コミカルな試合を繰り広げていたかと思えば、突如として表情が変わり、シリアスモードになることがある。「本当は最後まで茶化したいけど、スイッチが入ってしまうんです」と神妙な顔をする。

「スイッチが入ると、対戦相手しか見えなくなります。お客さんのことなんて、まったく見えない。本当はみんなの顔を見ながら楽しく、棚ぼたみたいな感じで勝ちたいんですけど......。みんな強いから、余裕がなくなっちゃう。恥ずかしいです」

 しかし、そのわずかな"シリアスな一瞬"こそが観客の心をつかむ。"プロレスラー原宿ぽむ"と、普段の自分はかけ離れているのだろうか。

「同じ人間なんですけど、違う人格のような気がする。自分のなかにある陰と陽を凝縮して、キレイに二極に分けてやっている感覚です。どっちも偽ってないけど、普段はけっこう落ち込んだりとか、好きな人ほど話せなくなったりとか......暗いかもしれない」

 映画、アニメ、演劇、アイドルのライブ......ジャンルを問わずエンタメを吸収し、「プロレスに生かせないか?」と考えているという。特にアメコミが好きで、『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』『ハズビン・ホテル』など、ダークな作品に惹かれる。「ぽむ選手の試合も、どこかブラックな要素がありますよね」と水を向けると、「プロレスって全部出ちゃいますよね」と苦笑した。

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