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中谷潤人は「成長が加速している」元ヘビー級王者が語るセンスの高さと、井上尚弥との夢の一戦

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【何もできなかった挑戦者に同情「仕方ないさ」】

「ジュント、いい試合だったな! 全勝同士の対戦といっても、チャレンジャーとは大きな差があった。格が違うよ」

2月24日、挑戦者を3ラウントKOで下した中谷潤人(左)photo by 山口裕朗2月24日、挑戦者を3ラウントKOで下した中谷潤人(左)photo by 山口裕朗この記事に関連する写真を見る 28勝無敗(18KO)のメキシコ人挑戦者も、中谷潤人にかかればひとたまりもなかった。WBCバンタム級チャンピオンが3ラウンドでダビド・クエジャールをKOした5時間後、ペンシルバニア州ベンサレムの2LDKアパートで、中学2年生の娘と暮らす元世界ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーン(67)は興奮気味に語った。

「クエジャールは、リングに上がった時点でナーバスになっていた。表情が硬かったよ。ゴングが鳴ってからの動きもだ。世界タイトル初挑戦だから無理もない。サウスポー対策はしただろうが、ジュントほどのチャンプの攻略法などそう簡単に見つからないから、パンチをかわせなかった。オープニングベルから、ペースを奪われたね。

 一方、ジュントはリラックスして挑戦者を迎え撃った。自信満々だったな。試合開始直後から、バンバン左ストレートを打って相手を威嚇した。距離とタイミングを計っていたね。挑戦者は恐怖心でいっぱいだった筈だ。『これを喰らったらマズい』と心理的に追い詰められていった。俺が見る限り、クエジャールはディフェンス力がかなり低い。あれで無敗っていうのがちょっと信じられないね。彼の戦績は、優秀なマネージャーがついているからこそだ。ジュントは1ラウンドを戦ってみて、『ノックアウトは時間の問題だ』と感じていただろう」

 2023年5月のファイトで中谷がアンドリュー・モロニーを最終ラウンドに仕留め、WBOスーパーフライ級王座に就いたあたりから、ウィザスプーンはこの日本人チャンピオンに注目している。無論、井上尚弥にも高い関心を示す。

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著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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