井上尚弥の優勝はもはや確実視。望まれているのはド派手な勝利だ (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「優勝候補筆頭には井上が推されてしかるべきだ。(今年5月に対戦した)ジェイミー・マクドネル(イギリス)は減量苦で疲弊した状態だったのかもしれない。たとえそうだとしても、粘り強さに定評があり、試合当日はウェルター級くらいの体格だったマクドネルに圧勝したことは見過ごされるべきではない。

 井上が喧伝(けんでん)されてきたとおりの実力者であれば、今大会でも圧倒的な強さで勝ち進んでしまうだろう。とくに井上の左ボディパンチは現代のボクシング界でも最高級の武器。他の選手たちにそれに対抗するスキルがあるとは考え難い」(『ハニバル・ボクシング』ショーン・ナム記者/韓国系アメリカ人)

「井上が本命だ。彼のパワーは凄まじく、近況がいいのも魅力だ。彼に関しては常に強豪と戦うのを拒まない姿勢も素晴らしい。最近のボクシング界ではめったに試合をしない選手のほうが妙に注目を集めたりもするが、井上はそんなファイターではなく、誰に対しても準備はできているはずだ」(試合のマネジメントを行なう「スプリット-Tマネージメント」のマネージャー:ジョー・キンバオ氏/フィリピン系アメリカ人)

 3人のパネリストはそれぞれ当然のように井上を優勝候補のトップに挙げた。サンガリア記者が述べているとおり、アメリカでの軽量級への関心は大きいとはいえないが、日本の"モンスター"がWBSSに出場することはやはり認識されている。

 端的に言って、バンタム級のトーナメントが盛り上がるかどうかは井上次第だ。ある大会関係者は、「井上に派手に勝ち進んでもらわなければ始まらないよ」と漏らしていた。『リング』誌のパウンド・フォー・パウンド(階級・体重を一定にしたら、誰が一番強いか)でも井上は現在6位だが、WBSSで勝ち進めば世界トップ5入りも有望。今大会はハイレベルなメンバーが揃っているが、さまざまな意味で井上が主役であることは明白だ。

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