【国際プロレス伝】アニマルは見た!
「神様」と「人間風車」の猛練習 (2ページ目)
ゴッチさんはプロレス......いやレスリングと言ったほうがいいかな。レスリングで勝つためにはどうしたらいいか、四六時中考えていました。ヨガを研究するために古代インドの歴史やヒンドゥー教、さらにはアーユルヴェーダ(インドの伝統的医学)など、あらゆることを学んでいました。また、独自のトレーニング法も考えていて、日本のプロレス界にヒンズー・スクワットを本格的に教えたのはゴッチさんと言われています。僕も勝つために『ヨガをやれ!』と言われましたよ」
また、ゴッチは日本に来てから武士道にも興味を持ち、『五輪書(ごりんのしょ)』をはじめ宮本武蔵の関連本を愛読していたという。まさに、レスリングの求道者である。
「宮本武蔵といえば、僕も師と仰ぎ、学ばせていただいています。浜口道場の片隅を、武蔵が『五輪書』を書かれた場所『霊巖洞(れいがんどう)』と名付け、そこで坐禅を組み、無になって考えるんです。
そして、娘の京子や道場生に語ります。『外形は千変万化しようとも、根本に内在する一心の緊張は、常持続、常一貫を要すると知る』。
あるとき、郭(くるわ)に上がった武蔵に太夫(たゆう)が琵琶の弦を切ってみせながら、『ゆるみおし』と言うんですね。ところが、武蔵は『一瞬の隙が命を失う』と、決して心を緩めなかった。太平の世、兵法などでは立身出世はおぼつかず。ましてや、鉄砲に取って代わられて剣の道を極める者などなく、武蔵は世の人々から笑われたことでしょう。それでも、己の道を極めようと、求道の旅を続けた。『常に兵法の道を離れず』。武蔵が自身の生き方を記した『独行道(どっこうどう)』の言葉です。
求める道を一本に絞り、一瞬たりとも気を緩めず、追い求め、徹底する。そのために、息を抜くな! 気を抜くな! リラックスなどしている暇はない。考えろ! 24時間、常に勝つことだけを考えろ! 己が信じた道を、バカになって追い求めて行け!
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