田口良一を支えた怪物との激戦。「相手は井上尚弥より強いはずがない」 (4ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 写真●山口裕朗 photo by Yamaguchi Hiroaki

試合中とは対照的な、リラックスした笑顔を見せる田口試合中とは対照的な、リラックスした笑顔を見せる田口

──階級が変わってしまったので現実的ではないかもしれませんが、もし今の井上選手と再戦するとなったら、どう戦いますか? 

「距離を潰しにいきます。井上くんは遠い距離からの踏み込みが異常に速くて、そこで体重が乗ったパンチをもらったらどうしようもない。だから中に入っていくしかないと。彼はインファイトも強いですけど、遠い距離、中間距離はもっとすごいですからね。『中に入ってコツコツ』しかないですね」

──そんな井上選手との試合で、田口選手が得たものは? 

「確実に僕の"後ろ盾"になっています。(2014年の)世界初挑戦のときも、『相手は井上くんより強いはずはないから大丈夫だろう』と思っていました。直近のメリンド戦も同じでしたね。その意識があるのは大きい。負けはしましたけど、彼とやってよかったです」

──田口選手の成長という点では、同ジムの大先輩である内山高志さんも重要な存在だったと思いますが。

「もちろんです。内山さんはあまり語るタイプではなく、『勝手に真似しろ』といった感じでした。シャドーやスパーを見て、いいコンビネーションがあったらすぐに真似してましたよ。内山さんだけでなく、トレーナーのホン・ドンシクさんや会長など、自分を支えてくれた人たちがひとりでも欠けていたら、自分は世界チャンピオンになれていなかった。僕はすごく運がよかったと思います」

──昨年の7月に内山さんが引退を発表した際には、何か言葉をかけましたか? 

「これまでの感謝の気持ちを伝えました。そうしたら、内山さんに『おまえが引っ張っていけよ』と返されて。そのときに『はい!』とは言ったんですけど、実際には"ワタナベジムを引っ張っていく"ために何をすればいいのか、よくわからなかったんです。

 昨年末のメリンド戦の前にもそれを考えていて、行き着いたのはやはり、『世界チャンピオンとして勝ち続けるのが大事なんだ』ということ。そんな僕を見て『こういう選手、人間になりたい』と周囲に思ってもらうことが大切だと思いました。内山さんのように、口ではなく結果を出すことで引っ張っていくということが、自分なりの答えです」

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