柔道100キロ級に現れた高校3年の新星は「技よし、顔よし、頭よし」 (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Sportiva

「現在の柔道は、重い階級でも、すらっとした、軽い階級から上げていった選手が強いと思う。昔軽かった人は、組み手とか、技がしっかりしている。昔から重かった選手って、体重に頼ったりしちゃうと思うので。(リオ五輪100キロ超級銀メダリストの)原沢(久喜)さんとか、七戸(龍)さんとか、そういうタイプの柔道家に自分は近いと思います」

 今年4月の選抜体重別選手権では、実績のある年上の柔道家を相手にしながら準決勝まで進出した。軸がぶれず、相手の技に対しては長い足を浮かして簡単にすかしていた柔道が印象に残る。バランス感覚が鋭いのだろう。

「股関節が柔らかいんだと思います。相手の技をガチッと受け止めるんじゃなくて、受け流す感じ。ほかの選手からは『やりづらい』とか『技が吸収される』とか、よくそんなことを言われますね」

 将来のビジョンや、自分の柔道の特徴、相手が抱く印象について言葉を尽くして語ることは、高校生のアスリートがなかなかできることではない。こういう理知的な一面によって、飯田が大人びたアスリートに映るのだろう。

「記憶力はいいと思います。小学校や中学校の時に、誰にどんな負け方をしたかとか、今でも覚えていますから。試合前に、対戦が予想される相手の対策を練るときなんかに、生かせているとは思います」

 飯田は昨年の講道館杯にも出場した。初戦に勝利し、2回戦では北京五輪81キロ級代表の小野卓志に勝利するなど、準々決勝まで進出した。この春まで順調にキャリアを積んできたものの、今年の全国高等学校柔道選手権では団体戦の決勝・大将戦で敗れ、昨年、高校三冠を達成していた国士舘が久しぶりに日本一を逃す一因となってしまう。「その悔しさが、春からの成長につながった」と岩渕監督は振り返る。

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