【ハイキュー‼×SVリーグ】クインシーズ刈谷の「お姉ちゃん」なセッター、佐藤彩乃は日向翔陽の「楽してこうぜ」のパスに「やばい」
クインシーズ刈谷 佐藤彩乃
(連載17:広島サンダーズの川口柊人は音駒のクロの教えも参考に「積極的に」プレーする>>)
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その情景を、今も彼女は覚えている。
小学3年の時、バレーボールの体験会に行った。そこで、楽しさに痺れた。小学1年の頃から、母親と一緒にテレビでバレーを観て、"やりたい"という気持ちが募っていたこともあっただろう。
「初めてバレーをやった時ですか? ボールをアンダー、オーバーでパスした、といった記憶はないんですよ」
佐藤彩乃はそう言って愛らしく笑い、空気を華やかにした。
「みんなと一緒になって、同じことをするのが楽しかったんです! 体を動かすのは好きで、それは鬼ごっこをするのが好きだった延長線かもしれませんが。バレーは"みんなでボールを落とさないようにする"というのが楽しくてハマりました。"チーム"という意識があって面白かったというか」
共同作業に楽しさを感じた。バレーに没頭する日々の始まりだった。2歳下の妹と、母の送迎で練習場に通ったという。
ポジションがセッターに固まったのは、中学2年の時だ。
「他の子よりも、オーバー(ハンドパス)は上手だったかもしれません。それに身長が大きくなかったし、アタッカーよりもいいかなって」
そう語る佐藤は、セッターとしてひとつひとつのプレーの感覚をつかみ、高校、大学でも少しずつ精度を上げてきた。しかし、「まだ自分のスタイルを確立しきれていない」と謙虚に言う。彼女が見つけるべき道筋があるのだろう。
昨シーズンは、所属していたKUROBEアクアフェアリーズで、入団2年目ながらキャプテンに就任した。周りをまとめる。それができる資質は生来的なものなのだろう。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。