かつての天才少女・森田あゆみ。幾度の手術と失意も「テニスが好き」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki

 その部位を治すには、リハビリと患部の強化、そして打ち方も含めた対処方法を探っていくしかない。一朝一夕には成果の出ないそのプロセスを、彼女は根気強く8カ月続けた。

 復帰したのは、2015年3月。1年前に56位だったランキングは389位まで落ちていたが、それでもそこは彼女にとって、新たなスタートラインだった。

 だが4カ月後、彼女は5大会に出場した後、再びテニス界から姿を消す。理由は、右手首の手術だった。

 手首も腰と同様に、森田が長年痛みと不安を抱えていた箇所である。それまでも痛み止めを打ちながらプレーしていたが、すでに対処療法も限界に達していた。受けた手術は、尺骨短縮術。患部には金属プレートを入れ、骨がつくには6カ月かかると言い渡された。

 それから4年が経った今、彼女は「まさか、こんなに長引くなんて、思ってもみませんでした」と、ただただ苦笑いを浮かべる。

 術後はスポンジボールから打ち始めたが、負荷を高めると強度の腱鞘炎に悩まされる日が続いた。手首に入れているプレートが原因ということで、今度は除去するため、同じ箇所を切開する。

 結局、最初の手術から公式戦に出るまでに10カ月を要し、だがその試合でも痛みを覚え、途中棄権を強いられた。翌2017年にも5大会に出るが、6試合戦って勝利はひとつ。敗れた5試合も、3試合が途中棄権だった。

 翌2018年は2月に1大会に出るも、その時に新たな痛みを、右手の薬指の付け根あたりに覚える。最初は腱鞘炎かと思っていたが、あまりに消えぬ痛みに精密検査を受けると、診断結果は腱の脱臼。その治療のため、またも手術を受けざるを得なかった。昨年夏のことである。

 かくして、2015年夏の手術以降、ほぼ試合に出られぬままに重ねた歳月は、4年の長きに及んでいた。

 だがその間、彼女は「1週間以上のまとまったオフは取ってないし、旅行とかにも全然行ってないんです」と照れくさそうに笑みをこぼす。「コートに行って、5分打ったら痛みが出たので、やめて......」という失意も、数え切れないほど味わった。

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