全豪優勝でフェデラーは「生ける伝説」に。2人の激闘に、錦織は何を思う (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 サーブ&ボレー、リターンダッシュ、チップ&チャージ、ネットプレーを絡めて早い展開を信条とし、相手に時間的余裕を与えないでゲームをコントロールしたフェデラーは、いわば"柔"のテニス。

 一方、厚いグリップのフォアハンドストロークから放たれる、相手のラケットをはじく強烈なトップスピンを武器に、人並み外れたフットワークとコートカバーリングで、驚異的なディフェンスを誇るナダルは"剛"のテニス。

 2人がそれぞれ得意とする柔と剛のプレーのコントラストは、テニスが本来持ち合わせるゲームの駆け引きや面白味を堪能させるもので、観客を大いに魅了した。

 ナダルがフェデラーのバックサイドにボールを集めるのはいつもの戦術で、フェデラーも百も承知とばかりに老獪な対応をしてみせた。特に、フェデラーがベースラインからコートの中にステップインして早いタイミングで、バックハンドストロークをクロスやダウンザラインへ流すのは秀逸だった。ナダルにとっては、フェデラーのバックサイドを崩し切れなかったのは誤算だっただろう。

 2セットオールになって、足の付け根や右太ももが痛み始めたフェデラーが、メディカルタイムをとったが、その直後のファイナルセット第1ゲームで、いきなりナダルがサービスブレークに成功した。

「先にブレークしたファイナルセットにはいくつかチャンスがあった」というナダルに対して、フェデラーは決してあきらめずに戦い、そして自分を信じ続けた。第6ゲームでは攻撃的なショットを放ち続けてナダルのミスを誘い、フェデラーがブレークバック。

 試合終盤に自分のベストテニスができたことに自ら驚いていたというフェデラーは、さらに第8ゲームもブレークし、結局第5ゲームから5ゲームを連取して、3時間38分におよぶ宿敵ナダルとの激闘を制した。

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