ラグビー帝京大、今季無敗でV10達成。次の世代も有望株ばかり、再び黄金時代の到来か (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【細木主将は涙を流しながら】

 FW出身の岩出監督は成長したFW陣について「マイボールスクラムが(相手の)ペナルティになるので、本当に計算し尽くせる。安心して見てられた」と胸を張り、細木主将は「スクラムで圧倒できたことは、これからの僕の人生においても、このチームの未来にも大きくつながる」と語った。

 最後3つ目の勝因は、今季のキャプテンに細木が就いたことだろう。岩出監督は「精神的に戦う気持ちの強さ、熱量をみんなに示してくれた」と語るほど、細木に全幅の信頼を寄せている。

 しかし、もともと細木はキャプテンをするようなキャラクターではなかったという。大学3年まで学年リーダーを務めることもなく、母校・桐蔭学園のコーチたちも「驚いた」と話す。

 今季の副キャプテンとなったFL(フランカー)上山黎哉(4年)もしくはCTB(センター)押川敦治(4年)が新キャプテンになると予想されていた。連覇していた時代なら、細木は主将に選ばれなかったかもしれない。だが、岩出監督は「最も勝ちたい気持ちを前面に出している」という理由で細木に託した。

 昨年6月、静岡で行なわれた明治大との練習試合に、岩出監督は部員全員を連れて臨んだ。帝京大4年生の代は入学してから明治大に勝ったことが一度もなかったため(2018年1月の大学選手権・決勝以来)、苦手意識をなくしたかったのだろう。練習試合ながら32−28で接戦に勝利し、細木主将はうれしさのあまり涙を流した。「今季の帝京大は強くなる」と確信したシーンだった。

 悲願だった優勝を成し遂げた細木主将は、涙を流しながらこう語った。

「(インタビューで)自然に涙が出てきた。うれしかったのと、今までのいろんなことを思って涙が出てきた。苦しい時でもスタンドにいる仲間を見て、グラウンドに一緒にいて戦っている(気持ちだった)。仲間の顔を見て、必死に一生懸命、頑張りました!」

 復活Vで締めくくった岩出監督は「監督冥利に尽きる」と語り、「次の監督がしっかりと頑張ってくれる。個人的には一番チーム充実がして、一番いい時に渡せた」と、すでに後任も決めているという。

 決勝戦ではHO江良颯やNo.8(ナンバーエイト)奥井章仁ら2年生が躍動し、昨季高校生だったLO(ロック)本橋拓馬(京都成章)、FL青木恵斗(桐蔭学園)、SH(スクラムハーフ)李錦寿(大阪朝高)といった将来有望な1年生たちも大きな経験を得た。

 彼らが来季、3年生、2年生となって主軸として活躍することは必至だ。春から公式戦無敗で頂点まで駆け上がった「赤き旋風」が、はたして新監督の手腕でどう輝くのか。

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