伊藤美誠への対策が象徴する中国の本気。卓球女子団体で日本がストレート負けを喫した理由 (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by JMPA

 追い込まれた日本は、第3試合のシングルスに平野が登場する。相手はダブルスでも対戦した王曼昱。彼女は176センチと長身でリーチが長く、普通の選手ならば打ち抜ける厳しいコースであっても逆にカウンターで打ち返されてしまう、男子選手並の体格とパワーが持ち味だ。

 だからこそ、かつて中国勢を次々に撃破し、"ハリケーン・ヒラノ"という異名をつけられるほど恐れられた、平野の高速卓球で大柄の王曼昱を揺さぶっていく。この戦術が勝利のカギを握るかに思えた。

 平野もその持ち味を発揮しようと、前陣で構えながら、テンポの速いラリーを展開。もちろん得点する場面もあったが、それ以上に王曼昱のパワーに押し切られる場面が多かった。平野は第2ゲームこそ9-11と追い詰めたものの、最終的には0−3で敗退し、日本が表彰台の頂点に上がることは叶わなかった。

 結果的にストレート負けを喫した日本だが、種目に団体戦が追加された2008年北京五輪から今までで、もっとも金メダルに近い戦いをしたことは間違いない。準決勝の香港戦までは1試合も落とさず、計2ゲームしか失わなかった。これほど危なげなくメダル獲得を決めた大会はなかっただろう。

 今や女子卓球は日本と中国の"2強"と言ってもいい。それでも敗戦した要因は、やはり中国の日本3選手に対する徹底した「研究」と「準備」。これに尽きる。

 ダブルスでは石川と平野ペアの多彩な戦術に対応し、伊藤には世界ランキング1位の陳夢ではなく、女子シングルス準決勝で"美誠封じ"に成功した孫穎莎を当て、平野にはリーチやパワーの差で優位に立つ王曼昱をぶつける。戦術・技術への対策だけではなく、代表メンバーの人選からも、どれだけ日本との戦いを想定していたのかがわかる。

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