元ホンダF1山本雅史の2023総括 フェルスタッペンは「バケモノ」 では「大物」と「努力賞」は? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

── 今のフェルスタッペンの強さはどこにあると思われますか?

「とにかくミスが少なく、全戦ポイントを獲っていて、あの苦戦したシンガポールGP(第16戦)でも結果的に5位に入っていて、シンガポールGPを除けばすべて表彰台。自分自身とマシンの能力を最大限に引き出しているし、レース全体像を俯瞰して観ることもできていますよね。

 とにかくリタイアしないし、バトルでも当たらない。予知する能力とか、そういうセンサーがすごいんですよね。だからマシンにしろ、PU(パワーユニット)にしろ、『何かおかしいからチェックしてよ』と言ってくる。

 なので、マックスのクルマにはトラブルが起きないですよね。フリー走行ではあってもレースを失うようなトラブルはない。そういうところも人並み外れていると思います」

── レッドブルのチームとしての強さは?

「レッドブルには優秀な戦略チームがありますが、なかでもハンナ・シュミッツ(主席戦略エンジニア)はやはりすごいです。チームのミーティングで戦略会議をしていても、クリスチャン(・ホーナー/レッドブル代表)に『それ、本当にいけるのか?』と言われても、冷静に『大丈夫です』って返すんですよね。

 普通はクリスチャンに言われるとドキッとして不安になってしまうものだと思うけど、ハンナは『いや、大丈夫です。これがベストです』って言いきっちゃう。あのミーティングの空気のなかで言いきれるっていうのはすごいことですよ。

 ほかにそれができてクリスチャンもすぐに納得するのは、ジョナサン(・ウィートリー/スポーティングディレクター)くらいじゃないですかね。彼はレギュレーションのことを相当勉強していて熟知しているから。その信頼関係がチームの強さなんだと思います。

 マックス自身もレースに対してものすごく考えているから、ハンナの言うことをスッと理解できる。考えていないドライバーとミーティングをすると、すごく時間がかかりますからね(笑)。レースエンジニアのGP(ジャンピエロ・ランビアーゼ)との関係値しかり、チームとドライバーのパッケージとしてはほかを寄せつけない総合力があると思いましたね。それが確信に変わったのが今年でした」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る