F1を撮影して30年。2人のベテランカメラマンがぶっちゃける今季展望 (2ページ目)
熱田 それにサッカーや野球などのカメラマンはスタジアムの中で撮る場所がほぼ決まっています。僕らF1の場合は、あの広いサーキットの中ならどこにでも動けますので、余計に難しいですよね。
桜井 カメラマンは各チームのガレージにも自由に行けますので、もし感染していたらいろんなところにウイルスをまき散らしてしまうことになる。いわば危険人物です(笑)。人数制限は仕方ないと思います。でも、表彰台の上でドライバーたちがお互いの健闘を称えて抱き合うこともなく、取材するカメラマンも数人しかいないと、なんか寂しいですよね。個人的にはただクルマが走っているのをコースで撮るだけだったら、取材に行かなくてもいいのかな、なんて思っちゃいますね。
2017年オーストラリアGP。これほどまで人が密集し熱気を帯びる光景を今季は見ることができない(桜井淳雄・撮影)熱田 僕はそういう異例なレースを含めて撮りたいですね。もちろんスタート前のグリッドにたくさんの人が密集し、各界の著名なゲストが顔を見せたり、ドライバーがスタンドのお客さんに向かって手を振ったりとか、そういう華やかさがF1の魅力のひとつです。でも、そんな光景のない無観客のF1の姿も記録してみたいという思いがあります。
桜井 2008年の秋に発生した世界的な金融危機である「リーマンショック」がF1に与えた影響はすごく大きかった。ホンダ、トヨタ、BMWなどの自動車メーカーが次々と撤退し、チームだけでなく僕たちメディアも経済的なダメージを受けました。でも今にして思えば、それは一時的なことでした。
今回のコロナは今年だけの問題ではないし、F1だけでなくすべてのスポーツ報道のあり方が変わっていく要素になり得ます。例えば、「ジャーナリストはドライバーやエンジニアに近づいて話をするな」「カメラマンはコースだけで撮影しろ」となっていくかもしれません。単にイベントが行なわれ、誰が勝って、誰が負けた、という報道だけだったら、僕らは行く必要ないですからね。ネットの簡単な記事だけで十分です。
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