ザウバー初テストでF1の味を知った松下信治。日本人復活への第一歩 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

松下信治はザウバーC36で精力的にテストを行なった松下信治はザウバーC36で精力的にテストを行なった 最下位という結果だけをみれば、意味のないテストだったように見えるかもしれない。ホンダとの提携を解除したザウバーで走ることに今さら何の意味があるのか――という声があったのも事実だ。

 それは松下自身もわかっていたが、もともと今回のテストで好タイムを記録してF1界に自分の力をアピールしようなどとは考えていなかった。実際に今回のテストでF1界が自分に注目したとも思っていない。

「正直、それは思わないですね。そういう機会ではなかったと思うし。外から見て光るようなところはなかっただろうし、そもそもザウバーで上位勢を上回るタイムを出すというのは不可能に近いことだし。僕らはアタックもやらず、レースシミュレーションばかりでしたしね。

 でも、チーム側にはドライビングでアピールはできたと思うし、エンジニアたちが納得してくれる走りもできたと思います。自分のための経験にしようと思って走っていたし、『ああしたほうがいい』とか、『フィードバックはもっと細かく言ったほうがいい』とか、エンジニアからの評価は注意深く聞こうと思っていますけど、外からの評価とかそういうところはあまり気にしないようにはしています」

 しかし、F1マシンという"新しい玩具"をドライブしたことで、新たな世界を知った松下の視野は明らかに広がった。

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