可夢偉はどうなる? 勢力図に変化は?2012シーズン注目のポイント (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

またしてもタイヤがF1を変える?

 1月25日に、ピレリはアブダビで2012年仕様のF1タイヤを発表した。

 モータースポーツディレクターのポール・ヘンベリーいわく「スーパーソフトはそのままに、他の3スペックを少しずつそれに近付けた」という今季のタイヤは、ゴムが柔らかくなりグリップが向上するとともに、接地面形状の設計変更によってハンドルを切った際の反応性も向上している。つまり、昨年よりもさらにクルマを振り回しやすくなるということで、よりアグレッシブなドライビングやバトルも可能になると考えられる。

 ピットストップは「どのレースでも3回になるようにスペックを選んで投入する」といい、スペック間の差を小さくすることで、「レース戦略にもさらに幅が生まれやすくなる」という。昨年よりもさらに複雑で見どころの多いレース展開になりそうだ。

 なお、ピレリはタイヤロゴの色によってスペックの識別ができるようにしているが、昨年不満のあったミディアム(白色)とハード(銀色)の視認が向上するよう、ハードは黒っぽい色味に変更されている。また、雨天用タイヤには青色(ウエット)と緑色(インターミディエイト)が採用されることになった。


小林可夢偉、さらなる飛躍へ勝負の年

 ザウバーで3年目のシーズンを迎える小林可夢偉にとっては、さらに上位のチームのシートを獲得するために、大きなアピールとなる"何か"が欲しい。

 可夢偉がF1ドライバーとして充分な素質を持っていることは、すでにF1界の誰もが認めている。しかし、上位チームに移ることは容易ではない。並み居る上位ドライバーたちを押しのけてシートを獲得するためには、理屈では計れない、チームが数値的に想定している期待値を大きく上回るような、特別なことを実現させる力が必要になってくるだろう。

 たとえば、ベッテルがトロロッソのマシンで雨のモンツァを制したように。あるいは、アロンソがミナルディのマシンでワークスチームをぶち抜いたように。

 F1で優勝や表彰台を目指すのならば、中堅チームを抜け出て上位チームのシートを手に入れる必要がある。これ以上、中団でくすぶっている余裕はない。さらなる飛躍に向けて、可夢偉にとっては勝負の年になるはずだ。


アメリカGP復活と開催地の拡大

 2012年は2005年以来となるアメリカでのグランプリ開催が予定されている。インディアナポリスに代わって舞台となるのは現在テキサスに建設されている最新のサーキットで、世界各地のサーキットの名所と呼ばれるコーナーを模して、数多くの要素を盛り込んだ珍しいレイアウトが特徴。

 有名なスパの急斜面「オー・ルージュ」やトルコの「ターン8」、鈴鹿の「S字」などが一度に楽しめるお得なサーキットになっている。

 昨年初開催で予想以上の成功を収めたインドGPも継続され、さらなる盛り上がりが期待される。さらに2013年にはフランスGP復活の動きがあり、ニューヨークでの開催も計画中。2014年には冬季オリンピック後のソチでロシアGPの開催が予定されている。このあたりの動向もより明確に見えてくるはずだ。

 2012年はまたしても大変革の年になりそうな予感に満ちている。F1は常に姿を変え、新しい未知の世界へと飛び込んでいく。だからこそ面白い。そんなF1の醍醐味を、存分に楽しませてくれるシーズンになりそうだ。

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