神戸新聞杯は、横山典騎手があやつるマイスタイルが馬券のスパイス
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
夏競馬が終わり、秋の中山・阪神開催も、はや3週目を迎えます。先週は阪神でローズS、中山でセントライト記念、2週前にも中山で紫苑Sが行なわれるなど、秋競馬が始まってからは毎週、3歳世代の最後の一冠を目指すトライアル戦で白熱した戦いが見られています。
そして今週は、菊花賞トライアルの神戸新聞杯(9月24日/阪神・芝2400m)が行なわれます。
毎年、このレースでも春の実績馬と夏の上がり馬が激突し、熱戦が繰り広げられます。しかも、本番の菊花賞(京都・芝3000m)でも好走する馬の多くがここから出てきています。過去10年の菊花賞を振り返っても、優勝馬の8頭が神戸新聞杯組。それだけ重要なトライアル戦と言えます。
普通、トライアル戦と言うと、収得賞金に余裕がある実績馬にとっては"たたき台"。ここを使って、本番でのパフォーマンスアップを図るのが一般的です。
逆に、賞金の足りない馬にとっては"勝負どころ"。本番への権利を獲るため、ほとんどの馬がここに勝負を絞って目いっぱいに仕上げてきます。その分、トライアルで結果を残したとしても、そのピークを維持できず、本番ではなかなか結果を出せないことが多いです。
ところが、この神戸新聞杯に関して言うと、目イチの勝負で権利を獲得した条件馬が、そのまま本番でも好走することが多々あります。
昨年2着のミッキーロケットは、本番では不利があって5着に敗れましたが、一昨年の勝ち馬リアファルは本番でも3着と好走。3年前の2着馬サウンズオブアースと3着馬トーホウジャッカルは、本番でも勝ち負けを争って、前者が2着、後者が1着と結果を出しました。それ以前にも、サトノノブレス(2013年、神戸新聞杯3着→菊花賞2着)、ビッグウィーク(2010年、神戸新聞杯3着→菊花賞1着)、オウケンブルースリ(2008年、神戸新聞杯3着→菊花賞1着)などが、神戸新聞杯で権利を獲って本番でも好結果を残しています。
春のクラシックに出走するためには、春の時点である程度完成している必要があります。しかし、競走馬の3歳春というと、未完成どころか、まだ脚もとが固まっていなかったり、馬体に緩いところが多かったり、内臓も弱かったり、体質がしっかりしていなかったりする場合が結構あります。その時点では、すごい素質を持っていながら、その能力の半分も出せていない馬がたくさんいます。
それでも3歳秋を迎えると、ひ弱かった馬がひと夏越して大きく成長。人間で言えば、中学生だった子が高校生、大学生になるようなもので、体格も中身も激変することがあります。前述の馬たちは、まさしくそうした成長過程にあって、一戦こなすごとにたくましさを増していったのでしょう。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。