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決め手不足のサウンズオブアースが
有馬記念でなら狙える理由

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 早いもので、今年ももう有馬記念(12月25日/中山・芝2500m)ですね。

 日本ダービーが"ホースマンの夢"であり、競馬関係者にとって最大の目標レースなら、有馬記念はファンにとって1年の"総決算"となるレースであり、馬券を買う人も、買わない人もみんなが注目する、世間一般の師走の風物詩と言えます。

 今年はGI馬が5頭のみ。うち2頭が牝馬と、全体的なレベルはそれほど高くはありません。それでも、3歳時に菊花賞を制し、今年も天皇賞・春(5月1日/京都・芝3200m)とジャパンカップ(11月27日/東京・芝2400m)を勝って、「現役最強」と目されているキタサンブラック(牡4歳)に、「ハイレベル」と言われた今年の3歳世代からも、皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)3着、ダービー(5月29日/東京・芝2400m)2着、菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)優勝と、世代トップクラスの成績を残したサトノダイヤモンド(牡3歳)が参戦。この"両雄"の対決が大きな話題となっています。

 僕自身、この有馬記念は非常に楽しみにしていました。それは、サトノダイヤモンドが出走してくるからです。

 世間で言われているとおり、今年の3歳世代は本当にレベルが高かったと思います。昨年の世代も、ドゥラメンテを筆頭に、リアルスティール、サトノクラウン、そしてキタサンブラックと、相当高いレベルだったと思いますが、実際はドゥラメンテが1頭、少し抜けた存在でした。それに比べて今年の世代は、そのドゥラメンテ級の馬が複数存在しているイメージがあります。

 今春、クラシックの前哨戦となる弥生賞のレース後、エアスピネルの手綱を取っていた武豊騎手が、「不思議な感覚」とコメントしていましたが、今年の3歳世代の強さは、その言葉にすべて集約されていると思います。

 数々の名馬の背中を知る名手ゆえ、武豊騎手はエアスピネルの背中にも「GIを勝てるだけのモノ」を感じていたのでしょう。そして、弥生賞でも普通の年であれば、楽勝している走りができた、という手応えだったと思います。しかしながら、その前に2頭の馬が存在していた――。

 それは名手にとって、まさしく"不思議な感覚"だったと思いますが、その名手の感覚こそ、この世代のレベルの高さを物語っています。そういう意味では、エアスピネルも他の年に生まれていれば、三冠馬になっていたかもしれませんね。

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著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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