【競馬】桜花賞、「3強」に割って入る馬はいるか
4月特集 春競馬、クライマックス(6)
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
今年もクラシック(※)が開幕します。クラシックというのは、競走馬にとって一生に一度の舞台。ゆえに、厩舎関係者や騎手にとっても憧れの舞台であり、誰もが同舞台での勝利を目標にしています。
※桜花賞、オークス(以上、牝馬限定)、皐月賞、ダービー、菊花賞と、3歳馬が世代の頂点を決するGI5競走のこと。
そのクラシック第1弾は、3歳牝馬による桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)です。今年の3歳牝馬戦線では、これまで3戦3勝という無敗の重賞勝ち馬が4頭も登場。そのうち3頭が桜花賞に出走予定で、非常に見応えのあるレースになりそうですね。
レースの中心となるのは、やはりその3頭の無敗馬たちでしょう。なかでも、注目されるのは、3勝すべてを牡馬相手に勝ってきたルージュバック(牝3歳)。新馬戦(2014年9月28日/新潟・芝1800m)で圧巻のレースを披露し、その時点で一躍「クラシック候補」と言われるようになりました。
2戦目の百日草特別(2014年11月9日/東京・芝2000m)でも、道中は後方2番手をゆっくり追走。最後の直線に入って仕掛けると、瞬時に反応し、強烈な瞬発力を繰り出してあっという間に突き抜けていきました。そのインパクトあるレースぶりから、ともすると「相手が弱かったのか......」という印象も受けそうですが、2、3着に退けたベルーフ(牡3歳)とミュゼエイリアン(牡3差)がのちに重賞を制覇。勝ち時計(2分00秒8)も2歳のレコードと、ルージュバックのポテンシャルの高さを改めて証明しました。
普通、これほどの瞬発力を持つ馬は、その速い脚が一瞬しか使えず、使いどころが難しいものです。しかし、ルージュバックは抜け出してからも脚色が衰えることなく、追えばどこまでも伸びて行きそうな雰囲気でした。実際にそれを裏づけるレースを見せたのが、前走のきさらぎ賞(2月8日/京都・芝1800m)です。
後方待機の過去2戦とは違って、好位3番手の内を追走。そのまま最後の直線を迎えると、仕掛けられた瞬間、またも抜群の決め手を見せて突き抜けていったのです。どの位置からでも、あのとてつもない速い脚を繰り出せ、なおかつ長く使えるのは、まさに強烈な武器ですね。
また、きさらぎ賞では、関西までの長距離輸送、初の右回り、そして好位で折り合う競馬と、あらゆる課題をクリア。本番の桜花賞に向けて、多くの経験を積んで、いい準備ができたと思います。今回は初の阪神コースで、初めてのマイル(1600m)戦となりますが、長距離輸送は前回で克服していますし、どの位置からでも競馬できることを考えれば、マイル戦にも問題なく対応できるでしょう。外回りコースですから、驚異的な末脚を長く使えるルージュバックなら、かえって好都合だと思います。
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プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。