【競馬】のちのダービー馬を世に知らしめた「一通のハガキ」 (3ページ目)
このセリ市において、ことさらディープブリランテに注目していたのが、のちに同馬を管理する矢作芳人調教師だった。同馬に惚れこんだ矢作師が、親しい馬主に落札してもらうよう懇願していたのは有名な話。しかし、実際にディープブリランテを落札したのは、その馬主ではなく、大牧場ノーザンファームだった。この落札にこそ、あのハガキが関わっていた。
「落札者のサインを見て、ノーザンファームだとわかりました。でも、(ノーザンファーム代表の)吉田勝己さんは、事前に牧場に馬を見に来ていません。セリ会場でもじっくりとは見ていないはずです。ただ、彼はあのハガキを見ていました。『素晴らしい写真だ』と言ってくれましたよ」
セレクトセール2週間前に送った2000枚のハガキ。そのうちの1枚が、日本トップクラスの大牧場とディープブリランテを結びつけた。
ディープブリランテの出産に立ち会ったパカパカファームのフォーリングマネジャー(生産担当)伊藤貴弘氏は、セレクトセールをこう振り返った。
「僕は自信満々の社長とは違って、セール当日まで『売れないかもしれない』と思っていました。ディープブリランテはいくら成長力が際立っていたとはいえ、あくまで5月生まれ。(早生まれの馬とは)馬体の大きさが全然違います。それでも“売れた”というのがすごいことですし、矢作調教師も絶賛しているところを見て『やっぱりこの馬は別格なのかな』と感じました」
こうしてディープブリランテはオーナーが決まり、2年後のデビューを目指すこととなる。次回は、デビューに至るまでの日々を追っていく。
(つづく) ハリー・スウィーニィ
1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
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