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【欧州サッカー】マルセル・デサイーの全盛期は無敵だった 「インサイドキックでサイドチェンジする」と噂されたほど (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【CL史上初の快挙を成し遂げる】

 ライカールトがアヤックスに復帰したあとの守備的MFのポジションに、フランス代表の猛者は見事にハマった。頑丈な肉体を武器に、相手の攻撃を弾き返す。試合の流れを瞬時に察知する戦術眼によって、広範囲をカバーする。また、中長距離のパスも精度が高かった。

「デサイーはインサイドキックでサイドチェンジする」とのメディア評は大げさだったとしても、決して的外れではない。しなやかで強靭な下半身から繰り出されるキックは、彼のストロングポイントだった。

 この年、「セリエAはともかくCLは難しい」と各方面から疑問視されていたミランは、デサイーを軸にヨーロッパの舞台でも快進撃を見せる。1回戦のアーラウ戦こそ合計スコア1-0と苦戦したが、コパンハーゲンとの2回戦は7‐0、準々決勝リーグを2勝4分無敗・6得点・2失点で通過し、準決勝ではモナコを3-0で叩き潰した。

 決勝では、ヨハン・クライフ監督率いるバルセロナが待っていた。ジョゼップ・グアルディオラ、フリスト・ストイチコフ、ロマーリオなどを擁した、いわゆるドリームチームである。

 一方のミランは、DFの中心であるアレッサンドロ・コスタクルタと、衰えたとはいえチームに安心感をもたらすバレージが出場停止だった。どちらが有利だったか......あらためて言うまでもないだろう。

 しかし、結果は4-0。CL決勝で、ここまで下馬評が完全に覆されたケースも珍しい。

「我々はまるでアマチュアだった」(クライフ)

「夢のような一戦。完璧なフットボール」(フランス・フットボール誌)

 ミランは前半から勝利への飽くなき執念とボール奪取後の積極的なアプローチで、2‐0のスコアで折り返すことに成功する。そして後半開始早々にもリードを広げ、58分にトドメの4点目を突き刺したのが、デサイーである。

 後方から果敢に攻め上がり、バルセロナのDFラインが仕掛けたオフサイドトラップを苦もなく突破。最後の作業はそれほど難しくなかった。こうしてデサイーは、異なるクラブで2年連続ヨーロッパチャンピオンになった。CL史上初の快挙である。

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