マンチェスター・ユナイテッドの迷走がまもなく終わる 39歳の指揮官アモリムが「失われた10年」に終止符を打つ
悲劇は、2013年夏に始まった──。
およそ四半世紀にわたってマンチェスター・ユナイテッドの監督を務めたサー・アレックス・ファーガソンが勇退。バトンはデイヴィッド・モイーズに託された。
あまりにも突飛な人選に、世界中のユナイテッド・サポーターが絶望感と不安に苛まれた。
ふたりの共通点は国籍(スコットランド)だけだ。モイーズはエバートンに安定感をもたらしていたが、サー・アレックスの足もとに......いやいや、彼の背後に並ぶことすら許されない程度の監督である。
ルベン・アモリム監督はポルトガル出身の39歳 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 案の定、多くの選手が反発した。
「朝令暮改で困惑する」(リオ・ファーディナンド)
「ゲームプランが不明瞭だ」(ガリー・ネヴィル)
「神経質で人づきあいが悪い」(ウェイン・ルーニー)
主力がこぞって反旗を翻した結果、6年契約だったモイーズは10カ月で監督の座を追われている。
サー・アレックスが推薦したジョゼップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップが契約上の理由で、ジョゼ・モウリーニョは役員会の猛反対に遭ったとはいえ、なぜモイーズだったのか。キャリア、物言い、カリスマ性など、ユナイテッドの監督には小指の先ほどにもふさわしくなかった。
モイーズを解雇したあとも、監督の人選は迷走を続ける。ライアン・ギグス(暫定)、ルイ・ファン・ハール、モウリーニョ、オーレ・グンナー・スールシャール、マイケル・キャリック(暫定)、ラルフ・ラングニック(暫定)、エリック・テン・ハフ、ルート・ファン・ニステルローイ(暫定)......。基本方針が異なる監督を連れてきても、パフォーマンスは向上しない。
また、オーナーのグレイザー・ファミリーはユナイテッドを金儲けの手段としか考えず、強化もインフラの整備も素人同然のスタッフに任せていたため、他クラブから大きく後れをとった。サー・アレックス退任後10年、プレミアリーグの優勝争いに一度も絡めず、チャンピオンズリーグの出場権は5回、取り逃がしている。
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著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。