プレミアリーグ首位に貢献 遠藤航のライバル、フラーフェンベルフは「新しいリバプールの象徴」
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第26回 ライアン・フラーフェンベルフ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
今回は、現在プレミアリーグ首位と好調のリバプールで活躍する、オランダ代表のライアン・フラーフェンベルフを紹介。アルネ・スロット新監督の戦術のなかでキーマンとなっている。
今季好調のリバプールのキーマンになっているフラーフェンベルフ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【オランダの「6番」のポジション】
プレミアリーグで首位独走中のリバプール。第14節終了時点では2位チェルシー、3位アーセナルに7ポイントの差をつけていた。さらにCLリーグフェーズでも5戦全勝と首位。ミラン、ライプツィヒ、レバークーゼン、レアル・マドリードといった難敵を打ち破っていて、アルネ・スロット新監督の下、好調を維持している。
前任のユルゲン・クロップ監督は名門リバプールを復活させ、今日の地位を築いたカリスマ指導者だった。クロップの後任は誰がやっても荷が重そうだが、スロットは短期間でチームを軌道に乗せている。
リバプールは昨季からほとんどメンバーが変化していない。主力はすでに昨季もいた選手たち。スロット監督はオランダ人らしく自陣からのビルドアップを重視していて、これはクロップ時代と少し違うところだ。これといった新戦力もなしに、クロップ時代のスタイルに馴染んだ選手たちを使いながら、新しい戦術要素も加えていくのは簡単ではなさそうだったが、しっかり結果を出している。
その秘密を探すなら、ライアン・フラーフェンブルフになると思う。
昨季もいた選手なのだが、実質的に新戦力と言っていいプラスアルファになっているからだ。アヤックスのアカデミーで育ったフラーフェンベルフはオランダ方式を完全に理解しているので、新たな戦術のスムーズな浸透に大きな働きをしている。さらに、自身もポジションをインサイドハーフからひとつ下げたことで新境地を拓きつつある。
アヤックスでは16歳と130日でエールディビジにデビュー。これはクラレンス・セードルフの記録を更新する最年少記録だった。その後、バイエルンへ移籍して1シーズン、昨季からリバプールに加入した。
当初はインサイドハーフとしてプレーしていた。190㎝の長身で手足が長く、巧みなボールさばきとリーチを活かしたプレーが特長だが、昨季はいまひとつチームにフィットしていなかった。しかし、スロット監督がアンカーポジションにコンバートした今季は、水を得た魚となった。
オランダでは「6番」のポジション。センターバックの前に位置してビルドアップの中心になるとともに、DFラインの防波堤となる。とくにビルドアップにおいて不可欠の存在である。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。