久保建英の「連係力」がさく裂 アヤックス戦1G1Aの活躍に地元紙が「魔法」と激賞
11月28日(現地時間)、レアレ・アリーナ。ヨーロッパーグ(EL)でオランダの名門アヤックスを迎えたレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は、エースの久保建英が華々しいゴールを決めている。ELでは、ビジャレアル時代以来の得点だ。
自らの見事なアシストで1-0とリードしていた終盤だった。右サイドに陣取った久保は、相手のクリアボールを敵陣で拾うと、そのままドリブルに入る。すると、彼が進むべき道ができたように、するすると切り込む。敵選手をことごとく立ちすくませ、まるで魔法をかけたようだった。そして最後は鋭いカットインから、左足でコントロールしてゴールに突き刺した。
「2点目のシーンは、久保は何ができるかを、完璧に説明していた。彼はこうした急発進で切り込んだ時、短剣そのものになる」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、久保のゴールをそう評している。しかし、相手を剣で斬って捨てると言うよりは、一時的にフリーズさせる"呪術"のようでもあった。
「(1-0でリードしていたが、安定しておらず)チームは終盤の準備はできていなかったはず。そこで久保が魔法の瓶を開け、勝利を確実にする1点を決めた。背番号14がラ・レアルのELに望みをつなげたと言える」(『アス』)
久保はチームを双肩に担っていたが、その魔法にはタネがあった。
アヤックス戦で1ゴール1アシストの活躍を見せた久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る この日のラ・レアルは、不甲斐ない内容、結果だったバスクダービー(アスレティック・ビルバオ戦)での不名誉を挽回しようと、立ち上がりからミケル・オヤルサバルを中心に強度の高さを示している。しかし、単純に強いプレッシングや前に行く姿勢だけでノッキングした。アヤックスのキープ力の高い選手に起点を作られると、多くのセットプレーを許し、むしろ劣勢だったと言えよう。
それを劇的に変えたのが久保だった。
前半43分、久保は右サイドから左サイドにずれ、スペースを見つけると、アイエン・ムニョスからのパスを引き出す。そして絶妙にテンポを作り、シェラルド・ベッカーにスルーパス。そのクロスをオヤルサバルがターンからシュートに持ち込む。ボールは枠を外れたが、決定機だった。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。