ユーロ2024で市場価値爆上がり中 ニコ・ウィリアムズはこうしてブレイクした

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 スペイン代表のニコ・ウィリアムズ(21歳、アスレティック・ビルバオ)は、現時点で「ユーロ2024で最も価値を高めたアタッカー」と言える。

 今や欧州のトップクラブが、こぞってニコに食指を動かしている。プレミアリーグだけでも、リバプール、アーセナル、チェルシー、トッテナム、アストン・ビラがご執心。パリ・サンジェルマン、ユベントスなども興味を示しているという話だ。

 一番、熱心なのがバルセロナだという。スペイン代表で攻撃の対角を成すバルサの新鋭ラミン・ヤマルと、ニコは大の仲良し。また、同じバルサのフェルミン・ロペスとはプレーステーション仲間だし、ペドリは同世代でよくふざけ合っている。

「ジョアン・ラポルタ会長(バルセロナ)から、選手たちが"囲い込み指令"を受けているんじゃないか?」

 そんな噂が広がるほどだ。

 たしかに、バルサは歴史的にアスレティックの選手が比較的多く活躍し、関係性は悪くない。今もクラブ間で選手の行き来がある(2023-24シーズンはイニゴ・マルティネスがアスレティックからバルサへ移籍するなど)。ネイマール以後、バルサは右利きの左サイドアタッカーを追い求めていることもある。

 しかしながら、ニコは昨年12月、アスレティックと新たな契約(2027年6月末まで)を更新している。それだけに本人も、「今はユーロに集中している。自分にとって、アスレティックが自分の家だよ」と移籍騒ぎに釘を刺した。ただし、移籍違約金は5800万ユーロ(約100億円)と言われ(久保建英よりも安い)、ビッグクラブにとっては"お買い得"なのだ。

 市場価値爆上がりのニコの正体とは?

ユーロ2024で一躍スター候補に躍り出たニコ・ウィリアムズ(スペイン)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAユーロ2024で一躍スター候補に躍り出たニコ・ウィリアムズ(スペイン)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る 今大会、ニコは爆発的スプリントで主に左サイドを切り裂いている。時速36.5キロの俊足もさることながら、スタート&ストップの緩急差が特徴だろう。トップスピードでの両足ボールコントロールにも優れ、瞬間的に相手を置き去りにできる。縦への推進力だけでなく、カットインから切り込むプレーもあり、マーカーに次のプレーを読ませない。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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