三笘薫のドリブルはなぜ速いのか風間八宏が分析「ドリブル時のボールの回転に注目」
独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、今季の欧州サッカーシーンで飛躍している選手のプレーを分析する。今回は、日々進化しているブライトンの三笘薫のプレーを解説。彼のドリブルはなぜ速いのかを詳細に語ってもらった。
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【ドリブル時のボールコントロールが正確】
いまや世界最高峰のプレミアリーグのなかでも屈指のドリブラーとして知られるようになったブライトンの三笘薫は、10月20日にクラブとの契約を2027年6月まで延長。推定年俸は、5年総額で最大約40億円と言われている。
三笘薫のドリブルを風間八宏が解説 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 2022年カタールW杯の約半年前、当時三笘がレンタル先のユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)でプレーした2021-22シーズンを終えた頃、風間八宏氏にその特徴を解説してもらったが、あれから三笘が予想以上の進化を遂げたのは周知のとおりだ。
市場価格も右肩上がりとなっている現在の三笘は、当時と比べて何が成長したのか。あらためて、風間氏に聞いてみた。
まずは、三笘最大の武器とされるドリブルのディテールについて。相手の脅威となっている三笘のドリブルは、一体何が違うのか。
「いちばん見てほしいのは、三笘がドリブルする時のボールの回転です。
どの方向のドリブルでも、常にボールが縦回転をしています。しかも、自分の体勢がどんな状態になっても、ボールだけはいつも行きたい方向に縦回転で進んでいるから、彼が持っているスピードがボールに妨げられていません。だから、自分が進みたい方向に、最短かつ最速で進めるわけです。
もしボールの回転が斜めや横に変わってしまうと、彼のスピードにブレーキがかかってしまいますが、そうならない。まず、それ自体が誰でもできることではありません。
別の言い方をすれば、彼のドリブルはボールを運ぶ時に、ボールを持っていない状態になっている。つまり、自分から離れたところにボールがあってもボールをコントロールできていて、自分はただ走るだけの状態になっています。
リモコンでボールを遠隔操作しているような状態なので、あとは自分の体をそこに持っていくだけでいい。邪魔な相手をかわしていけば、自動的にボールを進みたい方向に運ぶことができるわけです。
そもそもこのドリブルは、それを可能にするための正確なボールタッチができなければ成立しません。ドリブルを始める前のボールの置き場所を含めて、これは彼独特の技術であり、その正確性が確実にレベルアップしたと思います」
速さとはプレーの正確性。正確でなければスピードは生まれない、という風間氏の理論どおりのドリブルを、三笘は実践していることになる。
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著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)