オランダ代表が伝統の「4-3-3」に戻したら...アヤックス勢に頼らず、リベロを置き、ハードワーカーを起用して生まれ変わった

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 オランダとクロアチアは、ともに国の規模こそ小さいものの、選手の育成に秀でており、攻撃サッカーを愛し、ワールドカップやユーロで世界のファンを魅了してきた"サッカー王国"だ。

 しかし、オランダは1988年の欧州選手権以来タイトルから遠ざかっており、クロアチアは優勝経験そのものがない。両国にとってネーションズリーグは、是が非でもほしいトロフィーである。

 この両者が6月15日、ネーションズリーグ準決勝の舞台で相まみえた。その熱戦は延長戦にもつれ込み、クロアチアが最後に力の差を見せつけて、4-2で決勝進出を果たした。

先制点を決めて喜ぶオランダ代表FWドニエル・マレン先制点を決めて喜ぶオランダ代表FWドニエル・マレンこの記事に関連する写真を見る ルカ・モドリッチの妙技・献身・存在感に、1万5000人のクロアチアサポーターと2万5000人のオランダサポーターが酔った。クロアチアの勝利がほぼ決まったタイムアップ寸前、中盤のマエストロが交代でピッチを引き上げると、4万人の観衆がスタンディングオベーションを贈った。そして、オランダのロナルド・クーマン監督は「おめでとう」と言って、労をねぎらった。

 この日、オランダのテレビ局『NOS』で解説を務めたピエール・ファン・ホーイドンクは「まるでサンチャゴ・ベルナベウでスタンディングオベーションを受けたロナウジーニョのようだ」と語った。

 2005年のクラシコで、レアル・マドリードのサポーターから"バルセロナのクラッキ"が惜しみない拍手をもらった伝説のシーンを想起させるほど、モドリッチのプレーは輝き、オランダサポーターを虜(とりこ)にしたのだ。

 試合後のフラッシュインタビューでNOS局のレポーターは「あなたのパスポートを確認させてもらえませんか?」と質問にジョークを交えると、その意図を汲み取ったモドリッチは笑いながら「あなたさえよければ、あとでお見せしますよ」と答えた。

 シーズン最後の大会で美しいプレーだけでなく、タフに戦いきった37歳のフィットした姿に、解説者のラファエル・ファン・デル・ファールトも感嘆していた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る