旗手怜央がリーグ優勝を決めた試合のハーフタイムにポステコグルー監督にかけられた言葉とは 「そこまで言われたら絶対に後半は見返してやる」 (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

【「全然ハードワークしていないじゃないか」】

 アンジェさんはハーツ戦のハーフタイム、ドレッシングルームに姿を現すと、映像を使いながら、僕に向かって言った。

「レオは攻守ともに求めている役割ができていない。全然、ハードワークしていないじゃないか」

 その言葉を聞いて、自分自身の身体と心にスイッチが入るのがわかった。

「そこまで言われたら絶対に後半は見返してやる」

 闘志に火がついたとでも言えばいいだろうか。それでも頭は冷静だった。

 限られた時間のなかで、前半の自分の動きを整理した。加えて相手は前半終了間際に退場者を出し、人数が1人少なくなっているため、後半はより自分が攻撃に顔を出すことができるようになるはずだと思った。

 また、「ハードワークをしていない」と言われたからといって「闇雲に走る」、もしくは「ただ運動量を増やす」というのではなく、ハードワークすることで、どういうプレーにつなげなければいけないかを模索した。

 自分のプレーの傾向として、特徴が発揮できていないと感じている試合では、ボールに寄っていってしまう癖があるのを思い出した。ならばその逆で、スペースに走り込むことでチームに貢献しようと考えた。

 あの試合であれば、ニアゾーン。攻撃的な位置に顔を出せる回数が増えるため、2列目からDFの背後に走ろうと――。67分、(古橋)亨梧くんが決めたゴールへのアシストは、まさにその動きと発想から生まれた。

 右サイドのハーフライン付近でキャプテンのカラム・マクレガーがパスを受けて前を向いた。トラップが右足で、彼の利き足である左足で蹴れる状況にあると判断した時、僕は手を挙げながら右サイドのDFの裏へと斜めに走った。

 その動きを見てくれていたキャプテンは、縦に浮き球のパスを出してくれた。走り込む際、まず一度、ゴール前の状況を見た。その時、亨梧くんがニアに入ってきそうな気配があった。きっと、そのさらに奥には(前田)大然も詰めてきているだろう。

 そう思うと、大事なのは、どのようなボールを折り返すか、だった。速いボールなのか、それとも(味方に)合わせるボールなのか。もう一度、ゴール前を見ると、亨梧くんがニアに走り込んできているのを把握した。ならば、これは後者である点と点で合わせよう。キャプテンからのパスはバウンドしていて処理は難しかったが、ダイレクトで折り返すと、亨梧くんが左足で合わせて決めてくれた。

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