カタールW杯で6回目の優勝に突き進むセレソン。ヨーロッパナイズされながら、ブラジルらしさを漂わせる魅力的な仕上がり
注目チーム紹介/ナショナルチームの伝統と革新
第6回:ブラジル
戦いぶりに迷いのないブラジル
カタールW杯で6度目の優勝を目指すブラジルは、迷いのないブラジルだ。プレースタイルに関して言えば、これほど首尾一貫した代表チームもないのだが、そのセレソンでも揺れはあったし迷いもあった。それが今回のブラジルにはない。
カタールW杯に臨むブラジルは、南米予選を圧倒的な成績で首位通過しているこの記事に関連する写真を見る 南米予選を14勝3分の無敗で1位通過。2度目のワールドカップに臨むチッチ監督のチームは、ヨーロッパナイズされている。主力のほとんどがヨーロッパでプレーしているからだが、それでもどこから見てもブラジルらしいのだ。
あまりにも多くのブラジル人選手がプレーしてきたせいで、ブラジル成分はもはやヨーロッパサッカーの一部になった。そしてその「ヨーロッパ」をブラジル代表が完全に消化した結果なのだろう。
GKはアリソンとエデルソンの世界トップクラスの2人がいる。ダニーロ、マルキーニョス、チアゴ・シウバ、アレックス・サンドロの4バックはいずれもトップクラブのレギュラーだが、エデル・ミリトンやガブリエウもレアル・マドリードとアーセナルで守備の中心として活躍している。
ボランチもカゼミーロ、フレッジ、ファビーニョなど人材豊富。アタックラインの左には左にヴィニシウス、マルティネッリ。右にラフィーニャ、アントニーと逸材が揃い、2トップはネイマールとルーカス・パケタが息の合ったコンビになった。すべてのポジションに、質量とも圧倒的な人材がいる強みは変わらない。
軽快なパスワークと高度な技巧、即興の冴えはいかにもブラジルらしく、それでいて組織も規律もちゃんとある。しかも、それが組織的には見えないぐらいこなれている。勝つために不本意ながら導入してきた「ヨーロッパ的なもの」は、もはや異物ではない。「ヨーロッパ」を呑み込み、完全に消化したブラジルである。
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