「奇人」がいまや「普通」の戦術へ。現代のGKは足技なしには務まらなくなった
サッカー新ポジション論
第7回:ゴールキーパー
サッカーのポジションや役割は、時代と共に多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割を再確認していく連載。今回は「ゴールキーパー」を取り上げる。近年最も進化したと言われる、このポジションのプレースタイルを紹介する。
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現代の足技GKの代表格、マンチェスター・シティのエデルソンこの記事に関連する写真を見る<最も進化したポジション>
試合前のウォーミングアップに一番早く出てくるのは、どのチームも決まってゴールキーパー(GK)だ。これは昔からそうなのだが、ウォーミングアップの仕方は大きく変わった。
以前はキャッチングやセービングの練習をしていたものだが、現在はトラップとキックから始めることが普通になっている。コーチが蹴ったボールを方向づけしてコントロール、逆サイドへ蹴るなど、足を使った練習から始める。いまやGKは11番目のフィールドプレーヤーになったからだ。
GKがバックパスを手で処理できなくなったのは、1992年だった。それからGKに足技が要求されるようになっている。ただし、それはGKのフィールドプレーヤー化と直接の関係はない。GKに足技が要求されるようになったのは、戦術の変化が原因である。
ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いていたバルセロナが、ゴールキックをショートパスでスタートし始めた。GKからDFにボールが渡った瞬間、GKはプラス1のフィールドプレーヤーになる。DFからのリターンを受けて、フリーの味方にパスをつなぐ。ビルドアップの進化は、GKとともに始まった。
最深部からのパスワークに対して、相手チームはハイプレスで応じる。ボールを奪えばゴールは目の前だからだ。ところが、守備側は常に1人の数的不利なのだ。
フィールドプレーヤー10人をマンツーマンでマークしても、GKが余ってしまう。GKへプレスするなら、フィールドプレーヤーの誰かはマークできない。これを同数にするには、守備側のGKが相手のFWをマークするしかないわけだが、それをやったチームは今のところない。つまり、GKがビルドアップに参加すると、攻撃側は必ず数的優位になる。
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