スーパースター、R・バッジョの今。渋谷で語ったカズへの羨望と今後の夢 (4ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 現役時代から今に至るまで、何回か彼を取材したことがある。最後に会ったのは2年前。彼がスポンサー契約をしている企業のイベントで来日した時だ。イベントが終わった後、ウェアラブルカメラを買いたいというバッジョ(バッジョは大のカメラ好きでもある)と渋谷の街に出て、居酒屋で食事をした。

 話はまず、カズに及んだ。カズとは彼がイタリアでプレーしていた時からの知り合いで、この前日にもわざわざホテルまで訪ねてきてくれたという。

「彼がまだ現役でやっているのは本当に驚きだよ」

 バッジョは言う。実はバッジョとカズは同い年だ。

「私の膝はもうぼろぼろで、引退をしてから一度も、そう、本当に一度も試合をしたことはない」

 バッジョはどこか寂しげだった。

「はっきり言ってうらやましいよ」

 ビールを飲んで少し饒舌になると、話は若手育成のことに及んだ。

「子供は何よりも先にボールとのフィーリングを覚えるべきだ。ボールは最高の友達だと心から感じる必要がある。もしそれを子供の頃に獲得していたら、大きくなってもその関係は変わらず、必ずドリブルにも違いが出てくる」

 そしてこれからの夢を語ってくれた。

「サッカー協会をやめても、あの時書き上げたプロジェクトはあきらめてはいない。だから、そんなサッカースクールを作ろうかとも思った。しかし、個人でやるスクールはたかが知れているし、直接指導するにも限りがある。そこで考えついたんだ。私の指導理念に基づく指導をしてくれるコーチを育てたらってね。今はそういうコーチ育成のスクールを作りたいと考えているんだ」

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