2019.10.30

安部裕葵、バルサBで存在感。
だがトップ昇格へ残された時間は少ない

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 安部裕葵は、控え組の6人と輪になって、リフティングに興じていた。同年代同士だけにリラックスした表情だ。他の選手の失敗に、一同に誘われるように笑みを洩らした。

 今夏、安部はバルサBに入団後、ほぼすぐにスタメンの座を勝ち取っている。U-22日本代表招集を挟み、4試合連続で先発出場。ゴールはなかったものの、そのセンスで見る者を唸らせていた。しかし第7節を前に筋肉系の故障で外れると、すぐに復帰したものの、先発の座を取り戻せていない。最近2試合は出場時間がむしろ少なくなり、この日も控えだった。

 リフティングのボールのコントロールを珍しくミスした安部は、キックがあてずっぽうになった。少し冷やかすような仕草をチームメイトがした。安部は苦笑いだった。

サバデル戦の後半30分から出場した安部裕葵(バルサB) 10月27日。ヨハン・クライフスタジアムは、バルセロナの郊外にあるバルサの総合練習施設の一角に建てられている。バルセロナのセカンドチームであるバルサBのホームスタジアム。下部組織である「ラ・マシア」の少年たちにとっては、憧れのトップチームに昇格するための最後の登竜門だ。

 この日、リーガ・エスパニョーラ2部B(実質3部)のバルサBは、サバデルと対戦している。最近まで2部にいた相手で、昇格を争う直接的一戦ということもあって、今シーズン最高の4092人の観客を集めた。いわゆるダービーだけに、サバデルのファンも数多く駆けつけ、試合前からスタンドは盛り上がっていた。

 試合はバルサBがやや優勢に試合を進めている。ボールを持ち運ぶ技術で分があった。左サイドバック、セルヒオ・アキエメの攻め上がりが目立つ。左サイドを崩しつつ、中央の守備を撹乱。そして23分、左から中央へダイアゴナルに入ったパスをモンチュが持ち込み、1-0とした。

 リードしたこともあって、後半も安部にはなかなか出場機会が訪れない。チームのペースが落ち始めた後半30分だった。安部はキケ・サベイロと交代で、同じポジションの左サイドアタッカーに入っている。

「イロキ・アベだ。こいつはゴールを決めるぞ!」