コパ優勝も、不安げなネイマールの姿が象徴するブラジルの未来 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 本物のチャンピオンは、ネイマールの代わりにキャプテンマークを付けてプレーした36歳のダニエウ・アウベスだった。ダニ・アウベスはこれでプロ選手として勝ち取ったタイトル数が40となった。100年以上のサッカーの歴史で、プロの選手は何十万人といるが、これほど多くのものを手に入れた選手はいまだかつていない。

 スペイン、イタリア、フランス、ブラジルの各国リーグ、チャンピオンズリーグ、そしてブラジル代表......。ダニ・アウベスは今回のコパ・アメリカのMVPにも輝いた。彼よりも若いビッグスター、リオネル・メッシ、エディンソン・カバーニ、ルイス・スアレス、セルヒオ・アグエロ、ハメス・ロドリゲス、フィリペ・コウチーニョなど、多くのビッグネームたちを抑えて、最優秀選手となったのである。

 もうひとり、ブラジルの勝利に大きく貢献した選手がいた。大会前は誰も期待していなかった、レギュラーでさえもなかったエベルトン・ソウザ・ソアレスだ。決勝では先制ゴールを決め、3点目につながるPKを誘う大活躍だった。エベルトンはペルーのパオロ・ゲレーロとともに、3点を決めて大会得点王に輝き、最優秀新人選手にも選ばれた。

 ダニ・アウベスとエベルトン、新旧2人の活躍が、この大会のブラジルを牽引していた。

 しかし、先にも言ったように、ブラジルは決勝戦を含めてこの大会で、圧倒的な強さを見せていたわけではなかった。

 グループリーグでは、ベネズエラ相手に最後の最後にどうにか引き分けに持ち込み、ボリビア戦は3-0で勝ったものの、サポーターにさえブーイングされる体たらくだった。準決勝も、けっしてアルゼンチンよりいいプレーはしていなかったし、審判によってひとつでもアルゼンチンのPKが認められていたなら(メッシの言うような買収はなかったとは思うが)、結果はどうなっていたかわからない。

 なによりこのチームには、ブラジル人が愛してやまない美しいプレー――「ジョゴ・ボニート」がなかった。

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