2014.09.04

ブラジルW杯で活躍した選手がもてはやされた夏の移籍市場

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】ワールドカップ後の移籍市場(前編)

 メキシコ人GKのギジェルモ・オチョアを欲しがるクラブは、6月にはひとつもなかったはずだ。コルシカ島に本拠を置く小さなクラブ、アジャクシオでプレイしていたオチョアは、フランス1部リーグのシーズンを最下位で終えたばかり。メキシコ代表でも、ワールドカップ・ブラジル大会を前にした強化試合で冴えないパフォーマンスが続いていた。メキシコの新聞がファンを対象に行なった調査によれば、代表の正GKにはオチョアのライバルであるヘスス・コロナを推す声が圧倒的に多かった。

 ところがワールドカップが開幕すると、オチョアは好セーブを連発。グループリーグのブラジル戦では再三のピンチを防いで0-0のドローに持ち込み、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。メキシコはベスト16まで進出し、オチョアはバイエルンやリバプールなどヨーロッパのビッグクラブからも注目を集めた(結局、スペインのマラガが獲得した)。

マンUに移籍したオランダ代表MFダレイ・ブリント photo by Getty Images ワールドカップで活躍した選手が移籍市場で注目を浴びるのは、フットボール界の伝統だ。大舞台で世界を驚かせた選手は、好条件の移籍を勝ち取ることが多い。

 個々の選手だけでなく、特定の国籍が注目されることもある。この夏の移籍市場では、ワールドカップでベスト8に進んだコスタリカの選手の「平均価格」が上がっていたことだろう(代表に入らなかった選手の値段も上がったはずだ)。しかしフットボール界の多くの伝統と同じく、ワールドカップ後の移籍市場には不合理なことが多すぎる。