土壇場の舞台裏。本田圭佑、今夏のミラン移籍はこうしてなくなった (2ページ目)

  • 内海浩子●文 text by Uchiumi Hiroko
  • photo by Getty Images

 結局、ミランはCSKAと最後までいい関係を作れなかったのだ。クラブ側へのおうかがいも何もなく、本田のマネージャーとコンタクトを取って合意を取り付けたことで、CSKA側に不信感を植えつけた。その後は本田本人も使ってCSKAフロントにゆさぶりをかけたが、敵対心を増幅させただけだった。イタリアではありがちな常套手段だが、侮辱行為ととられても仕方あるまい。ガッリアーニCEOがアプローチをしくじったのは否めない。

 CSKAが本田の穴を埋める補強策がいまひとつに終わっていることや、チャンピオンズリーグでバイエルンとマンチェスター・シティがいる難しい組に入ったことも、本田残留の流れに拍車をかけた。ミランからのオファーと天秤にかけた時、金に困っていないCSKAが戦力を選んでも不思議ではない。

 一方、ミランにとって半年待てば無料で手に入るとわかっている選手に対して出す額としては、あれが精一杯だった。今のミランには、出さなくても得られるものに使う金はない。

 以前はベルルスコーニ元首相がミランの金脈だったが、その離婚を境に一族の財産が分散されて昔ほどリッチではなくなった。欧州の経済危機はベルルスコーニの事業にも影響を及ぼしており、業績は芳しくないため、ミランに金を使うつもりはない。一族の中で権力を持つ者たちに至っては、ほぼ全員がミランに関心を持っていない。

 ダメなら1月まで待てばいい。それが最後までミランの根底にはあった。ミランにとっては残念な結果とはいえ想定内と言えるだろう。

 ミラニスタとしてセリエAとチャンピオンズリーグを戦う自分をイメージしていた本田にとっては実現が先延ばしとなってしまったわけだが、計算通りに進まないのは移籍市場ではありがちなことなのである。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る