【イングランド】カペッロがイングランド代表監督を辞めた本当の理由 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 レアル時代のカペッロはデイビッド・ベッカムとも衝突したが、後に彼をチームに復帰させた。ベッカムがいたほうが試合に勝てると考えたからだ。カペッロにとっては人間関係より、試合に勝つことのほうが大切なのだ。

 そして彼は試合に勝ってきた。クラブ監督として16シーズンにリーグタイトルを9回獲得している。彼の前任のイングランド代表監督をみんな合わせても、リーグタイトルは10回しか取っていない。

 世間のイメージとは裏腹に、カペッロはイングランド代表でも勝っていた。2007年12月に彼が監督を引き継いだときのイングランド代表は、クロアチアを相手にひどいディフェンスをして、ユーロ2008の出場権を逃したチームだった。ところがカペッロが監督を務めた4年間に、イングランド代表は42試合を戦い、そのうち67%に勝った。好成績をあげた前任の監督たち──アルフ・ラムゼー、ロン・グリーンウッド、スベン・ゴラン・エリクソン、グレン・ホドル──でも、勝率は60%程度だ。カペッロのチームはこれまでの代表より点もよく取っており、1試合平均で1.5ゴールをあげている。

 つまり、カペッロはイングランド代表史上最高の監督だったとも言えるのだ。イングランド代表監督のキャリアはいつも涙で終わるが、少なくとも彼は涙とは縁がなかった。
(続く)

後編を読む>>カペッロは今夏のユーロでの代表の失態を予期していた

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る