ベガルタ仙台13年目の3・11 「これで燃えなかったらサッカー選手じゃない」想いを胸にJ1昇格へ

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

 試合前に舞っていた雪は、キックオフを待っていたかのようにやんだ。ピッチに立つ選手たちの頭上では、雲のすき間に青空が広がっている。

 3月10日に行なわれたJ2リーグ第3節で、ベガルタ仙台がホーム開幕戦を迎えた。東日本大震災で被災したこのチームは、発災当日の3月11日の前後の試合がホームに設定される。震災の記憶を風化させない、大切な一日だ。

決勝ゴールを決めて喜び合うベガルタの選手たち photo by Getty Images決勝ゴールを決めて喜び合うベガルタの選手たち photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 試合前のタイムスケジュールに、特別なものはない。11年当時のメンバーがスタジアムを訪れるとか、メッセージが大型ビジョンに映し出されるといった演出は用意されていなかった。

 それで、いいのだろう。3月11日に近いホームゲームでユアテックスタジアム仙台に来れば、あの日抱いた思いが、あの日から忘れたことのない思いが、あの日からクラブが辿ってきた道のりが、人々の記憶のなかで輪郭を持つ。東日本大震災からの復興を誓うこの日は、ベガルタ仙台とともに過ごす日常の温もりを、あらためて確認する機会でもあるのだ。

 試合前には黙祷が捧げられた。東日本大震災とともに、令和6年能登半島地震の被災者へ向けた祈りでもあった。

 2022年からJ2で戦っている仙台は、今シーズンから森山佳郎監督のもとで戦っている。若年層の代表チームに長く携わってきた「ゴリさん」のもとで、アウェー2連戦で勝ち点4を持ち帰ってきた。

 大分トリニータとの開幕戦は1-1のドローで、V・ファーレン長崎との第2節は2-1で競り勝った。どちらもJ1昇格候補にあげられる相手であり、ベガルタはしぶとく、粘り強く、必要なら泥臭く戦った。「個の力」や「高度な戦術」が押し出されがちだった過去2シーズンと異なり、サッカーの原理原則を追求する姿勢が強く打ち出されている。「自分たちがやりたいこと」と、ひとつひとつの試合で「やるべきこと」が、しっかりと整理されているのだ。

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著者プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

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