1位は「何をやってくるかわからない変人」。坪井慶介が選ぶ、イヤだったFWトップ10 (5ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

1位は久保竜彦。規格外のプレーは対戦相手も魅了していた1位は久保竜彦。規格外のプレーは対戦相手も魅了していたこの記事に関連する写真を見る1位 久保竜彦(元サンフレッチェ広島ほか)

 あの人は変人ですね(笑)。もう何をやってくるかわからない。とにかく規格外の選手でした。右足はほぼ使わないんですけど、だからといって左足のすごい技巧派かと言ったらそういうわけではない。すごくスピードがあるのかと言ったらそうでもない。ただ、身体能力はずば抜けていて、スケールがものすごく大きい選手でした。

 横浜FC時代の2007年の開幕戦で、信じられないロングシュートを決められたのは忘れられません。「そんなところから打つ!?」という感じですよ。ボールを受けて、ちょっと前を向いたと思ったらズドンと。「は? どのタイミングですか?」と(笑)。失点した時は浦和のサポーターから怒号が飛んでくるものなんですけど、あの時は埼スタがシーンとなりましたからね。

 10位の黒部さんもそうでしたが、ジャンプ系の身体能力は突き抜けていましたね。もともと僕よりタツさんのほうが身長は高いので、ヘディングの高さはあるなとは思っていたんですけど、実際に対峙してジャンプされた時の衝撃はすごかった。ちょっと日本人離れしていました。

 タツさんが広島にいた頃は僕が1年目だったんですけど、その頃からこの選手との対戦は本当に楽しいなと思っていました。

 タツさんのように型にはまらない選手は、通常であれば最初はそれで通用しても、段々とDFのレベルが上がってくると難しくなってくるものなんです。だからそこでプレーを計算したり、駆け引きを覚えたりするんですが、この人は一切してきてないと思います。

 最近会うことがあって、当時の話になったんです。「タツさん、あの頃なに考えていたんですか?」と聞いたら「あ? なんも考えとらん」と即答されましたよ。「あの時のあのシーンは」と聞いても「わからん。覚えとらん」ですからね(笑)。

 点を取るためにいろんな努力をしてきた人たちを、度外視するような存在だったと思います。今回のランキングを考える時に、1位はすぐに決まりましたね。

番外編 エメルソン(元浦和レッズほか)

 今回は僕の対戦相手ということでランキングには入れなかったんですが、練習で対戦した経験だけでも、エメルソンはタツさん以上の存在でした。

 高いテクニックと爆発的なスピード、駆け引きの巧さは、今回のランキングのなかでも一番でした。単純なスピードでも敵わなかったし、裏に抜けても、足元で受けてもどんな形からでも点が取れるので、どうにも止めようがなかったです。

 エメは練習を真面目にやるタイプではないんですけど、試合形式だったり、1対1だったり、ゴールが関わってくる練習は真剣なんですよ。だから相手をするDFとしてはものすごく勉強になりました。

 あの当時は、ハンス・オフト監督でしたけど、僕はいつもエメとペアを組んでフィジカルトレーニングをやったり、紅白戦では絶対に敵チームでした。彼とやることで、僕もどんな相手が来てもやれると、自信を与えてもらえたと思いますね。

 逆に味方としたらこれほど頼もしいFWもいませんでした。細い要求はなく、とにかく俺に預けてくれたら大丈夫という選手で、僕らは守っていればエメが点を取ってくれる安心感がありました。

坪井慶介
つぼい・けいすけ/1979年9月16日生まれ。東京都出身。四日市中央工業高校、福岡大学を経て、2002年に浦和レッズ入り。俊足を生かしたDFとしてチームの数々のタイトル獲得に貢献した、日本代表としても国際Aマッチ40試合出場。その後、湘南ベルマーレ、レノファ山口でプレーし、2019シーズンを最後に現役引退。現在はタレントとして活躍中。

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